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彼の態度が変わったと感じたことなんてなかった。
拓司は多忙だけれど、週に一度は会いに来てくれたし、外食やショッピングに行く事だってあった。


拓司の目はいつだって真っ直ぐで、恥ずかしげもなく愛の言葉をくれたけど、それはいつかは嘘だったの?


何も気付かなかった。
本当に何一つ気づけなかった。


熱愛相手とされる人気モデルの彼女はクイズ番組の常連で頭も切れるし、知識も豊富で、外見だってすらっと背が高くて、小さな顔に切れ長の大きな目、長い睫にすっと高い鼻は誰がどう見たって美人だ。
ちびで童顔でクイズに興味もない私よりずっと拓司とお似合いなのは明らかで。


付き合って三年目の記念日に買ってくれたペアリング。
メディアに出演する時は外していても二人でいる時はいつもつけていてくれた。
昨日だって彼の左手の薬指には私と同じプラチナリングが輝いていた。


拓司はどんな気持ちで私と会っていたんだろう。
昨日は一体誰を思って私を抱いたの。
耳元で囁いてくれた“愛してる”の言葉の向こうにいたのは私ではなかったの。


スマホが着信を知らせる。
ハッとして画面を見たらやっぱり彼からで。


いつも愛を紡いでくれていたその口で、何を話すつもりだろう。
私は、愛するあなたの口から謝罪も弁明も聞きたくない。


トーク画面に残される不在着信。
震える手でメッセージを打つ。


“好きだった”
指先一つで簡単に送れるメッセージ。
すぐに付いた既読の文字。


“さようなら”
別れの言葉を送ったあと、私は伊沢拓司をブロックした。


あなたと過ごした時間、私にとっては全てが宝物だったよ。
夢を見させてくれてありがとう。
もう二度と会うことはないのだろうけど、あなたの幸せを願っています。

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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時

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