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秘密 izw ページ32

「何見てるの?」
「ひゃあっ!?」


待ち合わせ時間を10分ほど過ぎた頃、背後から聞き慣れた声がして肩が跳ね、手が滑りスマートフォンを落とした。
素っ頓狂な裏声とあまりの驚きように彼も目を丸くした後に優しく微笑んで私のスマートフォンを拾い上げた。


「はい」
「あ、ありがとう」
スマートフォンの画面には『まわりにバレない!ペアグッズ』と大きめの文字と可愛らしい画像。
幸い落としたときに液晶が下向きだったこと、たとえ恋人同士であっても人のスマホを覗いたりはしない紳士な彼のおかげで、何を食い入るように見ていたかはバレていない、はず。


「行こうか」
「うん」


付き合って二年。
普通のカップルならペアリングの一つでも付けていそうなものだけれど、メディアへの露出も多い拓司の薬指には当然何もついていないし、私の薬指にも何もない。


いいの、別に。だって彼から愛されてることは明白だし、充分すぎるほど幸せにしてくれてる。
お揃いのものなんてなくったって、別に……。


なんて。


本当はちょっとだけ、欲しい。
指輪やネックレスみたいに目立つものじゃなくていい。
たとえば、ほら、アンクレットとか。
他の人から見えないものでいいから、欲しいな、なんて。


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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時

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