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試用期間 izw ページ30

「ねぇ!試しに3ヶ月くらい付き合ってみようよ!」


酔った勢いだった。
するすると入っていく甘い香りのウイスキーはその口当たりの軽さからは考えられないくらいのアルコール度数で。
薄暗くていい感じのジャズなんか流れちゃってるバーなのに、私達は相変わらずだ。


「……ねぇ、それ本気?」
真面目にも不真面目にも見える表情から本音はわからない。


二人で会うのももう6回目の今夜。
ふざけながら、重くなりすぎないように、いざとなれば冗談じゃんって茶化す逃げ道を残して勝負に出る私は臆病者。


でも今をときめくタレントで多忙な伊沢くんがわざわざ時間を作って会ってくれるくらいなんだもの。
まんざらでもないでしょう?


「本気だよ、だめ?」
あくまで声色は軽く、緩ませた口元で。
ぱちくりと大きく瞬きをした伊沢くんは小さく笑った。


元恋人から酷く傷つけられた私達は次の恋愛に踏み切る勇気なんか持てないくせに人一倍寂しがりで。
もう本気の恋なんてわからないけど恋人ごっこくらいなら出来るんじゃないかしら。
ほら、私達って似た者同士で意外とお似合いだと思うし。


「3ヶ月もあったらさ、俺」
「うん」
「本気になっちゃうよ」


目を伏せてしまった伊沢くんの表情はよくわからないし、こっちを見てくれていても視線を合わせることなんて出来ないんだろうけど。
テーブルの下でそっと繋いでくれた手。
応えるようにぎゅっと握り返して、急上昇する体温をあなたに預けるの。

甘い声 sgi→←。



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作者名:ももりん | 作成日時:2020年5月30日 18時

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