甘いそれと、 (ページ16)

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ハイヒール　izw ページ16

「何見てんの？」

二人でショッピングデートをしている途中、お気に入りのブランドの店頭に並んでいたハイヒールに目を奪われた。
買いに来たのは秋物のアウターだったはずなのに、靴を眺めてた私に拓司が不思議そうに聞いた。

「ううん、ごめん。何でもない」
「そのパンプスが気になるんじゃないの？」

私は苦笑いした。
拓司の言うとおり、シンプルだけどシャープな形のそのパンプスに一目惚れした。
だけどそのヒールの高さは確実に五センチよりも高くて。

「もしかして、俺のこと気にしてる？」

私たちの身長差は五センチ。
だからハイヒールをはいたら拓司よりも背が高くなってしまう。
そんな可愛らしくない彼女、嫌なんじゃないかと少し不安に思ったのだ。

拓司は私の頭をぽんぽんとしてから微笑んだ。
「絶対似合うよ。試着してごらん」

彼はすみませーん、とよく通る大きな声で店員さんを呼んで私の足のサイズを告げた。
戸惑いながら履いてみたそれは本当に素敵で、なんだか心が踊る。

「お似合いですよ」
店員さんがそう言ってくれて、嬉しくて立ち上がって拓司の方を向いたらやっぱり彼より視線が高くなっていて、どうしようかと返事に迷っていると拓司が店員さんに言った。

「これください。プレゼント用で」
「かしこまりました」

店員さんはいそいそとパンプスを箱にしまって、バックヤードへ行ってしまった。
私がおろおろしていると拓司は笑った。

「めちゃくちゃ似合ってたからプレゼントさせて。ちゃんと次のデートではいてこいよ」
ああ、もう。
さらっとそんなことしちゃう私の素敵な恋人。
一目惚れしたパンプスは一生の宝物になりそう。