睦月 you ページ1
人の波でごった返した明治神宮に、私は早くも初詣に来たことを後悔した。
時刻は午前二時で、もう一時間以上並んでいるというのにまだ拝殿が見えてこない。
いつもなら十分程度しかかからないのに。
「明治天皇も大変だねぇ」
河村さんが呟くようにそう言った。
お正月だからと無理言って着て貰った青みがかった灰色の紬の着物がとてもよく似合っている。
アクセントにと選んだ金茶の帯がお洒落で素敵。
私も振り袖を着たけど、慣れない着物で帯は苦しいし、草履は歩きにくいしで嫌になる。
「これだけ人がいると願い事を聞くだけでも大変だね」
「A、お願いする前にまず去年もありがとうございましたってお礼を言うんだよ。
それから願い事は一つにしなさいね」
まるで保護者のような彼に思わず笑ってしまう。
「今日は絶対のがあるからいいけどさぁ。
普段なら一つになんて絞れないよ」
「欲張りな奴め」
河村さんが意地悪く笑った。
彼の言う通り私は貪欲だ。
いつだって無い物ねだりをするし、隣の芝は青く見えるし、身の丈に合わない恋だってする。
一方河村さんは欲がない。
それはもう悟りでも開いてるのかってくらい。
他人を羨んだりしないし、部屋には寂しくなるくらい何もないし、私を恋人にしてしまうくらいだ。
そう、私たちは正反対で、でも、それが心地良い。
寒さで鼻が真っ赤になって、頬もピリピリと痛い。
繋いだ手の指先の感覚はほとんどない。
付き合って初めて迎える新年に一人舞い上がってしまい、人混みが嫌いな河村さんをなんとかねじ伏せてやってきた初詣。
無欲な彼は一体何を願うのだろう。
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ぽん(プロフ) - 完結おめでとうございます！お疲れさまでした！ほんとにこの作品が好きで、更新されるたび歓喜雀躍しておりました…！！ももりんさんの書くkwmrさん、不器用だけど優しくてほんと素敵でした…！また違う作品も楽しみにしています！ステキな作品ありがとうございました！ (2020年10月29日 20時) (
レス) id: 4b7a069960 (このIDを非表示/違反報告)
ももりん(プロフ) - そらまめさん» 返事が遅くなってすみません。そんなふうに言ってもらえて嬉しいです。恐ろしく遅い更新ですが、是非最後までお付き合いくださいませ(*´-`) (2020年7月24日 16時) (レス) id: 281ef44def (このIDを非表示/違反報告)
そらまめ - えっ…めっちゃ好みドンピシャだぁ…なんかこう緩い雰囲気なのに甘々なのがもうっ、好きです！！！(突然の告白) (2020年6月28日 13時) (レス) id: f9e97d8abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももりん | 作成日時：2020年5月16日 18時
