幼心に俺は ページ9
「楽しみにしてたのになぁ」
張り付いたような笑顔が痛々しいのにそんな彼女から目を離せない。
どうしてAちゃんは笑うのだろう。
俺は傷付いているはずの彼女に何も出来やしないのだろうか。
ずっと大切にしていた宝物のような恋だった。
彼女が突然いなくなってしまった時の喪失感は今でも鮮明に思い出せる。
*
「え？」
小学六年生の夏。
昼食は3日連続素麺で、母は鍋を火をかけながら「そういえば」なんてどうでも良いことかのようにAちゃんが引っ越したと言った。
ゲームをしていた手は完全に止まり、画面の中では一度も負けたことのない雑魚キャラにボコボコにされている。
去年の夏、また来年ねと笑って手を振ったAちゃん。
どうして、なんて気持ちと同時にいつかはこんなことになる気がしていて取り乱す訳もなく納得してしまっている自分がいた。
ぐつぐつとお湯が煮立つ音と、あまり聞くことのない負けた時のBGMは現実味がなくて、俺は確かにここにいるのに何だか映画でも見ているかのようだ。
「あ、拳ちゃん！もう素麺出来るけど」
「すぐ戻るから！」
急いで自分の部屋に戻って机の一番上の引き出しに入っている玩具みたいな携帯電話を手に取る。
電話帳を開けば、そこにはAちゃんの電話番号が登録してあった。
四年生のとき、通塾と同時に与えられたそれをほとんど使うことはなかったけれど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももりん(プロフ) - 早瀬さん» はじめまして。早瀬さんからコメント頂けるなんて……！嬉しいお言葉ありがとうございます(*_*)のんびりの更新になると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。私も早瀬さんの作品楽しみにしてます♪コメントありがとうございました！ (2021年4月24日 10時) (
レス) id: 2cecb9fa7c (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - はじめまして。『花束を君に』がとても好きで、それからももりんさんの作品を拝読しております。fkrさんが好きなのでももりんさんのfkr長編が読めること、とても嬉しいです！更新楽しみにお待ちしております！頑張ってください♪ (2021年4月23日 22時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももりん | 作成日時：2021年4月18日 23時
