弾む声 ページ23
「福良」
「……あ、え。何？」
「今日ぼんやりしすぎ」
撮影中なのに眉根を寄せて不機嫌にそう言った河村は多分こんな顔しながらも俺のことを心配している。
曖昧に笑って、寝不足なんだよねと誤魔化したけれど河村には全てお見通しな気もしてしまう。
演者としてクイズに集中しなきゃいけないのに、今朝沖縄料理が食べたいと微笑んだAちゃんの顔を思い出しては胸がチクリと痛み、また押し負ける。
不調というには酷すぎる有様で、流石に場の空気も重くなっていることに気付いていても自分じゃどうしようもなくて惨めだった。
*
「ごめん、待たせちゃった？」
「ううん、全然！」
待ち合わせ時間を10分ほど過ぎて嫌な汗を額に滲ませながら現れた俺に、Aちゃんは優しく笑ってくれて緊張が解けてくらっとしてしまった。
彼女の姿を見付けるまで怖かったのだ。
本当に来てくれるのか不安で仕方なくて、気を抜けば涙が滲むくらいだった。
「拳ちゃん？」
恋愛なんて何度もしてきたし、男女交際の経験だって人並みにはある。
それに俺はどちらかと言えばそういうのはドライな方だと思っていた。
なのに、Aちゃん相手だとこうも心を乱されて自分が自分じゃないみたいだ。
「Aちゃん、来てくれてありがとう」
「ん？ふふ、約束したじゃない」
「……うん、そうだよね」
口約束なんて何の保証もないって大人になれば嫌でも思い知らされて、俺はあの頃みたいに純粋にAちゃんを信じることが出来なくて。
「ね、ほら、行こ？」
ごく自然に俺の手を取るAちゃんだってもうあの頃とは違うのに。
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ももりん(プロフ) - 早瀬さん» はじめまして。早瀬さんからコメント頂けるなんて……！嬉しいお言葉ありがとうございます(*_*)のんびりの更新になると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。私も早瀬さんの作品楽しみにしてます♪コメントありがとうございました！ (2021年4月24日 10時) (
レス) id: 2cecb9fa7c (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - はじめまして。『花束を君に』がとても好きで、それからももりんさんの作品を拝読しております。fkrさんが好きなのでももりんさんのfkr長編が読めること、とても嬉しいです！更新楽しみにお待ちしております！頑張ってください♪ (2021年4月23日 22時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももりん | 作成日時：2021年4月18日 23時
