強がりな弱虫で ページ18
約束してた飛行機の時間は七時半。
６時に出たいけどA起きれる？なんてからかっていた彼は、午前５時を過ぎても帰ってきていない。
さぞかし寝心地の良いベッドなのだろう。
間抜けな顔してすやすやと眠っているに違いない。
カーテンの隙間から差し込んでくる優しい日差しは、一睡も出来なかった重たい身体には毒だった。
それでもベッドから這い出て顔を洗って、スキンケアして、それから出来るだけ丁寧に化粧をする。
きっとあの人は空港には来ないけど。
*
「拳ちゃん、ちょっとこっちおいで」
「うん」
ごくごくと喉を鳴らして冷たい麦茶を飲む私を、いけないものを見るように盗み見ていた拳ちゃん。
男らしさの欠片もないあどけない顔が可愛らしい。
まだ恋とかしたこと、ないんでしょう？
でも、もっと幼かったあなたは私をお嫁さんにしてくれるって言ってくれたの。
もうそんなこと覚えてないんだろうけれど。
そう思ったらふと寂しくなって、唇を押し付けた。
「ちょ、」
拳ちゃんは顔を真っ赤にして、固まってしまった。
「うーん、麦茶味？」
高鳴る鼓動を誤魔化すように茶化してみる。
拳ちゃんのことは好きだけど、そういう好きとはきっと違う。
なのにこんな気持ちになってしまうのはどうしてなんだろう。
「やっぱりレモンの味なんてしないよねぇ」
誰かがキスはレモンの味なんて言っていたけど、そんなのやっぱり嘘だった。
「す、するわけないじゃん！」
ぷんすかしながらも、私の顔も見れなくなっている拳ちゃんは年相応の男の子。
いきなりこんなことしてごめんね。
でもね、どうしても拳ちゃんの記憶に私という存在をしっかりと刻みつけておきたかったの。
だって、そう遠くないうちに私はきっとここへは来られなくなってしまうから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももりん(プロフ) - 早瀬さん» はじめまして。早瀬さんからコメント頂けるなんて……！嬉しいお言葉ありがとうございます(*_*)のんびりの更新になると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。私も早瀬さんの作品楽しみにしてます♪コメントありがとうございました！ (2021年4月24日 10時) (
レス) id: 2cecb9fa7c (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - はじめまして。『花束を君に』がとても好きで、それからももりんさんの作品を拝読しております。fkrさんが好きなのでももりんさんのfkr長編が読めること、とても嬉しいです！更新楽しみにお待ちしております！頑張ってください♪ (2021年4月23日 22時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももりん | 作成日時：2021年4月18日 23時
