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「大学、どう?」
「大変だけど、楽しいです。先生は相変わらず熱血教師してるんですか?」
「え、俺、熱血教師だった?」
そんなこと初めて言われたから衝撃で、すぐ顔に出てしまう俺だからきっとあからさまに驚いた顔をしたのだろう。
彼女はまた笑って言った。
「いつもちゃんと生徒と向き合おうとしてたじゃないですか。
補習とかあんなに丁寧にわかるまで付き合ってくれる先生いないってみんな言ってたし、元気がないなとか疲れてるのかなとか、そういうのすぐ気がついてすごいなって思ってましたよ。
そういうのって熱血教師って言うんじゃないのかなぁ」
あぁ、彼女はよく俺を見てくれていたんだな、と思うと同時に申し訳なくなって胸が痛む。
Aさんと向き合わずに逃げてしまった俺なのに。
「あのさ、あの時……」
あの日のことを覚えているのかは知らないけれど、謝らなきゃいけない気がして話を切り出した瞬間、バスが大きく揺れて身体がぶつかった。
細い肩に女性らしさを感じて心臓が跳ねた。
彼女は特に気にせずに続きを待っている。
こっちに向けられた視線に変に焦ってしまって、なんとも言えないもやもやした複雑な感情が込み上げてくる。
なんだか緊張した空気が流れる中、バスが停留所を通過して、聞きなれた抑揚のない機械音声で次の停留所がアナウンスされた。
「あ、俺、次」
ハッとして降車ボタンを押す。
ピンポン、と間抜けな音が車内に響いた。
見るからに慌てている俺を見て、彼女にまた笑われると思ったけれどAさんは目を丸くして呟くように言った。
「私も……次です」
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ふじ - もう面白いです!続き待ってます! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 68c088e357 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゃん(プロフ) - こうちゃーーん!可愛すぎるしカッコよすぎる。続きが楽しみです!更新頑張ってくださぁぁい! (2020年11月9日 6時) (レス) id: f413f36fa8 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - あぁーこのカンジのお話好き!応援してます!頑張ってください! (2020年11月6日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももりん | 作成日時:2020年10月30日 6時