you ページ34
「……A、さん」
彼の声で名前を呼ばれたことがどうしようもなく嬉しくて、また涙がこみ上げてくる。
「狡いです……」
「うん」
「私、やっと吹っ切れられそうだったのに……」
彼にぎゅっとしがみつく。
苦笑いして私の頭を撫でる彼は、多分もう教師の顔はしていないのだろう。
終わってしまったと思っていた恋が、今ここで確かに芽を出していて。
なのに、私はそれをどうすればいいのかわからない。
今更になって怖気づいているのだろうか。
取り乱すほどに彼のことを好きなのは確かなのに。
「俺、Aさんが思っているよりずっとダメな男でしょ」
「そんなこと、」
「自分が一番分かってるんだよ。
それでもAさんのこと好きだと言ってもいいのかな」
微かに震えた彼の声に私はやっと気が付いた。
ずっと自分だけが苦しいんだと思っていた。
どれだけ好きになったって叶うはずないと思っていたし、そもそも恋愛対象になんてなれるわけがないと最初から諦めていたこの恋は間違いなく辛かったけれど。
でも、それは同時に“好き”の先を考える必要はなくて。
想いを寄せる側のほうが切なくてやるせないと信じて疑わなかった。
だけど、ひたすらに真っ直ぐに想いをぶつけられた航平さんはその先の不安も恐怖も全部分かっていたから、私よりもずっと苦しかったんだ。
目を凝らさなければ星の見えない夜空は、私達みたいだなって思った。
航平さんを見つめれば、彼は優しい眼差しで応えてくれる。
私達はどちらからともなく瞼を閉じて、今度はゆっくりと唇を重ねた。
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ふじ - もう面白いです！続き待ってます！ (2020年11月14日 0時) (
レス) id: 68c088e357 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゃん(プロフ) - こうちゃーーん！可愛すぎるしカッコよすぎる。続きが楽しみです！更新頑張ってくださぁぁい！ (2020年11月9日 6時) (レス) id: f413f36fa8 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - あぁーこのカンジのお話好き！応援してます！頑張ってください！ (2020年11月6日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももりん | 作成日時：2020年10月30日 6時
