he ページ13
冷えた缶ビール片手に家路につく。
冬の空気は肌を刺すようように冷たくて頬がぴりぴりと痛む。
首を覆った柔らかいピンクベージュのマフラーから香るほんのり甘い匂いが鼻をくすぐる。
マフラーを巻いてくれた時、まだ彼女の温もりが残っていて。
こんなの、意識しないでいるなんて無理だ。
俺は、Aさんが――――。
年齢差でいったら恋人関係になるのに違和感なんてない程度。
知り合ったのが今だったなら。
いや、せめて教師と生徒という立場でなかったら。
そしたら普通にアプローチだってしただろう。
もうAさんは高校は卒業していて、成人だってしてて。
だから恋心を抱いたって何の問題はないのだけれど。
夜空を見上げれば今夜は満月で。
在り来たりだけれど『月が綺麗ですね』だなんて台詞が脳裏に浮かぶ。
冷えた鼻先をマフラーに埋めた。
昨日のLINEの返事に少し落ち込んだんだ。
社交辞令のようであまりに機械的な文章。
これはきっと改めて約束をしてまで会ったりは出来ないだろうなって。
缶ビールのプルタブを引くと、少しだけ溢れ出た炭酸で手が濡れた。
マフラーが汚れないように気をつけながら一気に流し込む。
あぁ、でも、どうしようもなく嬉しい。
このマフラーのおかげで次に会う約束が確実なものに出来たのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふじ - もう面白いです！続き待ってます！ (2020年11月14日 0時) (
レス) id: 68c088e357 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゃん(プロフ) - こうちゃーーん！可愛すぎるしカッコよすぎる。続きが楽しみです！更新頑張ってくださぁぁい！ (2020年11月9日 6時) (レス) id: f413f36fa8 (このIDを非表示/違反報告)
ピーチフラペチーノ - あぁーこのカンジのお話好き！応援してます！頑張ってください！ (2020年11月6日 15時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももりん | 作成日時：2020年10月30日 6時
