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ㅤいつもより早くに出て正解だったな。と隣でボソリと呟く皐月が早よ靴脱いで来いよと私の背を押した。


 そしてさっさと自分のクラスの下駄箱へ向かう堂々たるその背中に一種の尊敬の念を感じる。

 しかし年々妹の口調が逞しくなっていくのは姉が頼りないからだろうか。


「姉ちゃん履いたかー?」

 まだローファーを仕舞う途中だった。どきりとして振り向くと仁王立ちで構える皐月が手伝おうかと声を掛けてくるので慌てて変に踵が擦り減った上靴に履き替えてそばに行く。


「ふむ。ええー、先輩の靴箱はー…うん、来てるね」


 妹の視線は確かに花開院くんの靴箱に向いていた。


「知ってるの?」


 少し驚いて聞くとニンマリ笑ってうんと頷く。


「姉ちゃんの出席番号より一コ上でしょ? 前に別の先輩に用事があって行った時に見たことあるんよ。姉ちゃんの前の席に座ってる先輩をさああ」

「どうした急に」


 態度が変わった皐月がジロリと私を見てくる。なんだろう。じっと見てくるカワウソのようだ。


「いや?」

「絶対何かあるでしょ。気になるなぁ」

「ふふーん。ただ先輩と仲いいなーって思っただけよ?」

「そりゃ幼馴染だし…」

「だああーそんなこと言ってると花開院先輩誰かに取られちゃうよー」

「は? なんで誰かにって…」

 知りませーんっ。なんて言いながら駆け出す妹に私は何も言い出せなかった。少しの逡巡の後、考えることをやめた。


 私にとって花開院くんは花開院くんだ。
 他に思いつくことも無い。

 だから、いつか彼の隣に私以外の誰かが立っていようと──。


「待ってぇ…」

「待ってるから早よ来い」


 最近皐月は花開院くんに似てきたかも。

この小説の続きへ→←第三章 皐月の手



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ワモテ(プロフ) - 雪もちわんこさん» ご感想ありがとうございます。シリーズ物の第一作目なので思い入れがあり、ご評価頂けて嬉しいです。(*^^*) (2022年2月20日 22時) (レス) @page11 id: 6d40387773 (このIDを非表示/違反報告)
雪もちわんこ - 文章がよくてとても面白い小説でした!語彙力がない私と比べものにならないきらいです、、、! (2022年2月20日 19時) (レス) @page14 id: 1c6c8bc54a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ワモテ | 作成日時:2021年10月26日 16時

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