【鬼滅の刃】黒猫は夜を駆ける

近所迷惑が二件 ページ3

〜遡ること数時間前〜

西日が差し、空が茜色へと変わっていく時間帯。

木の上でくつろぐ狐姿のAは、早々と眠りにつこうとしていた。

『(よし、今日こそは三日ぶりに寝られる…！)』

狐は本来夜行性なのだが、昼間に移動や食料調達をしているAは夜に眠る。

しかし、色々と事情が重なり、満足な睡眠がとれない時が極稀だがある。

まぁその事情と言うのは近所迷惑防止条例違反という名の鬼退治だ。

一般常識的に考えると、そこは殺人未遂の類なのだがAはそう呼んでいる。

『(よし、おやすみなs「誰かー！た、助けてくれーっ！」…チッ)』

これが4日連続である。

この様に眠りを妨げられた時のAは非常に機嫌が悪い。

昔、熱帯夜が続いた年に、就寝時に来た訪問者を怒りの余り殴った事があるという。

その為、Aの知り合い達は細心の注意をはらって接している。

それでも鬼に襲われている人は決して見捨てない。

話が逸れたが、一応狐であるAは善逸、炭治朗以上に鼻と耳がよく利く。

そして風に乗って流れてくる匂いから鬼だと判断するA。

刀鍛冶の知り合いが打った特製の日輪刀を口にくわえ、悲鳴のもとへと駆ける。

Aの日輪刀は短刀なので、狐姿でも扱う事が出来る。

ちなみに刀身は濃い藤色だ。

Aが現場に到着すると、たった今から鬼が人を襲います、という時だった。

「あぁ？何だこの狐はぁ。」

小さな追手に気付き、ゆらりと鬼が振り向いた刹那、盛大な血飛沫があがった。

「なん、だとぉ……！？」

信じられない事態に鬼は目を見開くが、時既に遅し。

ぐらりと血溜まりの中に倒れた肉塊を一瞥し、Aはさっさとその場を後にした。

『(こっちはさっさと寝たいのにぃ！！迷惑だ！！！)』

通報に駆け付けた鬼殺隊士が一部始終を見ていたことも知らず。

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