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齟齬 ページ9

『俺のこと、気になってくれてるんですか?』

水木「そう言うわけじゃ…」

『違うんですか?』










時弥くんがいなくなると、Aはほくそ笑んでそう言った。







彼は今朝俺を助けたが、彼が龍賀家のどこの位置にあるのか分からない。






無闇に話せない。











水木「そんなことより、何故ここに?」

『……なんだか水木さんは質問ばかりですね。ここに来たのは差し入れとその侵入者さんを一目見るためです。』


ゲゲ「ゲゲ郎じゃよ。水木とやらにはそう呼ばれておる。」


『ゲゲ郎さんを一目見ようと。』








Aはまた笑った。



今度は着飾らない素直な笑顔だ。









『差し入れは笹餅ですよー。本当はおにぎり作ろうとしたんですけど、具を考えながらご飯食べてたらおにぎり分も食べちゃってて……』








笹の葉に包まれた餅を差し出すと、照れたように事情を話した。


こう見ると年相応の顔だ。









『夜食にでも食べてくださいね、ゲゲ郎さんも。』

ゲゲ「ん?ワシにもくれるのか?」

『あげない理由はないでしょ?』

ゲゲ「では有り難く。」








ゲゲ郎は笹餅を受け取ると、葉を開いて餅を取り出した。


そのまま口に頬張って食べる。






子供相手には話すのかよ……









『それじゃあそろそろ戻りますね。黙って抜け出してきたので、バレたらまたうるさい。』

水木「あ、わざわざありがとな。」

『……いえ、俺も会えて良かったですよ。ここ最近はすごく楽しい。』











Aはそう言って階段を降りて行った。


雨はまだ降っていて、暗い夜道一人で帰るAの後ろ姿が脳裏に浮かぶ。







何故か、とても悲しい気持ちになった。









水木「おいゲゲ郎、さっきの言葉の意味はなんだ?」









しばらく気持ちを噛み締めて、俺は後ろで餅を食ってるゲゲ郎に向いた。




ゲゲ郎はAの去り際「時ちゃんに渡した香はなんじゃ?」と言い放った。


Aは「龍涎香(りゅうぜんこう)です。」と言い残している。






ゲゲ「……」

水木「俺にはダンマリか?」

ゲゲ「話しても無駄な奴とは話さん。」






ゲゲ郎は徐に言いのけて餅を平らげると、俺に背を向けた。










はぁ……



















雨は行きと同じく速足に降っていた。


番傘を広げて、一歩外に出る。








『やっぱり気のせいか……』

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作者名:Mr | 作者ホームページ:Mobu  
作成日時:2023年12月16日 2時

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