旧時 ページ18
戦時中、拠点で不死の兵隊の噂と共に��死地の先駆者"という噂を聞いた。
鬼神の如き戦いぶりによって、窮地に陥った部隊を何度も救ったという。
「なぁ、知ってるか水木。あの死地の先駆者がウチの部隊に配属されたそうな。」
兵糧を口にしながら、隣の兵が話を切り出した。
俺は暑さと体力の消耗で、考えの追いつかない頭で聞いていた。
水木「…冗談を言える状況か？それに、もし本当の話だったとして、戦争の英雄が何でこんな最前線に配属される。」
「それが……どうやら上層部の連中に恥をかかせたらしい。」
「それなら聞いたぞ。お偉い奴らからの専属護衛隊の話を蹴って、おまけに会合で傍若無人の奴らを懲らしめてやったんだと。」
水木「そんなまさか……なら生きてる筈がないだろ。」
安全な後方で酒を煽ってる連中だ。
恥なんてかかせたら即その場で銃刑になってもおかしくない。
俺は一切その話を信じなかった。
誰も理不尽な上官の命令を拒めず死ぬ
そんな夢物語を信じてしまったら、尚更死が怖くなってしまう。
信じないようにした。
が、死んだその兵士の話は本当だった。
数日後、小さな少年が銃剣を背負って戦場に駆り出された。
大きさの合わない服に、細い身体に白い肌。
夜よりも黒いが、日の光で所々赤や青なんかの色として反射する髪。
その容姿はいかにも子供といった様子で、少年兵の最年少をはるかに下回っている。
��死地の先駆者��というのは、とても美しく残酷な子供だった。
「進めっ、進めーーーー！！」
砲弾が雨のように降り注ぐ中、脚がすくみながら多くの兵が死にに行く。
逃げ出したい、帰りたい、死にたくない。
心のどこかで訴えかけた。
「ぐぁあっ！」
「何だあのガキ！」
もういいと、俺は思った。
殺してくれと思った。
その時微かに敵勢の断末魔が耳に入った。
瞬間、その戦場の戦況は一変する。
小さな子供が砲弾も銃弾も爆弾も、恐れることなく突っ走り物陰に隠れる兵士どもを一掃する。
一人、また一人と……
戦いながら、武器になる物を破壊する。
俺たちが攻め込めるように。
この国は何で恐ろしいことをする……
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