可惜夜 ページ14
禁域から脱して、幽霊族のゲゲ郎に色々聞こうと思った矢先、丙江が木の幹に貫かれて死んでいた。
人の仕業とは思えない。
これは、幽霊族のような存在の仕業になるのか？
気になって騒ぎの丙江の死体のところへ、ゲゲ郎と水木と行った。
泣き喚いていた乙米は俺に気づいて、矢継ぎ早に持っていた扇子の角で俺の頬を打った。
頬は少し切れて、赤い血が数滴流れたが慣れっこだ。
そして怒りに狂っていたかと思えば、次には屋敷のこの部屋まで俺に縋り付いて今必死に自問自答している。
これも慣れっこだ。
乙米「次は……私よ。」
青ざめてブツブツと呟いている。
迚もかくても、この人の"何かあったら俺を呼ぶ"癖は治らないってことだ。
守って欲しいなら長田に頼めばいいものを……
乙米「A、絶対に私を守りなさい。そうしなければ、龍賀は終わり……アナタの居場所もなくなるのよ！」
こんな家、潰れるのならなによりだよ。
乙米「あの時のように、私を守ってみせて！」
『……。』
長田「乙米さ……奥様。」
ガタガタ震えながら訴える乙米。
俺はそれをただ冷たい目で見ることしかしなかった。
そんな時、部屋のドアがノックされ、すぐさま入ってきたのは長田だった。
俺と目が合うと怪訝な目を向けた。
そして乙米に報告する。
長田「禁域の妖怪が騒いでおります。このままでは外側の結界がもちません。」
乙米「何とかしなさい！絶対に妖怪を外に出してはダメ！」
妖怪？
あぁ……あれは妖怪だったのか。
思い出した。
幽霊族は確か人間よりも前に存在した先住民族とか……
何で忘れてたんだか、自分に呆れるな。
長田「今私はここから離れられません。……Aに行かせるのは？」
乙米「ダメよ！A、アナタはこの屋敷で私を守りなさい！」
鬼の形相と言った感じに乙米は荒ぶっていた。
その言葉に長田は不服そうな表情を浮かべて、部屋を出た。
『では俺は、屋敷を見てまわってきますね。』
作り笑いを貼り付けて、乙米を残して部屋を出る。
やっぱりいたか……
長田「禁域の妖怪を黙らせてきてください。」
部屋の外で待ち伏せていた長田は、そう言って俺に数枚の札を手渡した。
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