空目 ページ13
櫂の奪い合いは熾烈なものになった。
最終的に、使用人を舟から突き落とそうという考えに至って実行しようとした。
すると、禁域から激しい咆哮が鳴り響いてきた。
思わず使用人を水に沈めるところだったのを間一髪堪えて、禁域に視線を移す。
嫌な影が禁域を覆っていた。
『今すぐに戻れっ、水木が……!』
ねずみ「あれ!」
使用人の指差す方に視線がいく。
その先には、カランッ、コロンッとゲタの音がして、次の瞬間水木を背負ったゲゲ郎が木々の間から現れた。
何かに追われている。
人間の身体能力とは思えない飛躍力を見せて、ゲゲ郎は水木を抱えたまま俺達が乗っていた舟に着地した。
それからはびっくりだ。
誰も漕いでいないのに、舟が一人でに湖岸に向かった。
ゲゲ「オヌシ、何故ここにっ……」
『え?』
ゲゲ「っ、いや……何でもない。」
『いや……俺は何でもあるんですけど、後ほど色々聞いてもいいですか?』
状況の判断がつかず、困った顔のまま俺は愛想笑いをしてしまった。
時間が経つのは速いもので、水木が起きるのを待っていたら夕方になった。
寝てる水木の鼻血を拭おうとした時にちょうど起きた。
自分でやると言って、鼻血を拭き終えた頃「悪いな、手拭いを……」と謝ってきた。
『これくらいで謝らないでください。それで、さっきの河童といい禁域の化け物といい……何ですか?』
ねずみ「いやぁ、こりゃ助けられちまいました。」
ゲゲ「ねずみの。」
ねずみ「相変わらず幽霊族は顔が広い。」
『幽霊族……』
話に割って入ってきた使用人が、気になる言葉を言った。
幽霊族って、どこかで聞いたことがある気がする。
何だかさっきから頭が霞のようなものに撒かれて、思考が鈍る。
夕日のせいなのか、それとも何か思い出そうとしてるのか?
ゲゲ「オヌシ、名前は何じゃったか?」
『Aです。』
ゲゲ「うーん……」
俺の名前を聞いてゲゲ郎は何やら考え込んだ。
ゲゲ「昔の知人によう似とるような気が……」
『それって…』
「おい大変だ!今度は丙江様がっ殺されたぞ!!」
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