忘却 ページ11
水木は少し考え込んでから口を開いた。
水木「お前は何者なんだ?……Mを知っているのか?」
水木の質問からは、実権を握りたい克典の匂いがした。
水木をこき使うなんて、いい度胸だな……
『克典殿から何か聞いたんですか?
水木「…あぁ。」
意外にも水木はすぐに白状した。
克典から「Mの原料を探れ、そして最近行われているであろう不老不死の妙薬の調査も」と言われたそうだ。
『不老不死の妙薬ね……大方、克典殿が11年前の養子と俺が似ているから、戻ってきたと考えてるってところですか。』
水木「その通りだ。知っているんだな、前の養子のこと。」
『乙米殿の日記に写真が挟んであったんですよ。確かに俺に似てましたよ……それにしても、面白い考え方ですよね。以前の養子に似ているから、不老不死になって帰ってきたなんて。』
いつか乙米の部屋の掃除をしていた時、日記からはみ出た写真を見つけた。
気になって見てみると、おそらく黒髪の少年が写っていた。
俺によく似た少年で、唯一違ったのは服装と表情くらいだ。
ヘラヘラしてる俺と違って、無愛想で颯爽としている。
水木「そうか?」
『ダメです、タバコは1日一本ですよ。』
水木は相槌を打ちながら、新しいタバコを咥えた。
ニコチン中毒め、身体が壊れる。
俺は水木の手からタバコを没収して、代わりにココアシガレットを口に突っ込んだ。
水木「甘……」
『それで我慢してください。』
水木「……似てるな。」
水木はココアシガレットを摘んで、そう呟いた。
何の話だか分からなくて首を傾げる。
まぁ、その話も聞きたいんだが……
おれは、さっきから視界でチラチラしているものが気になってならない。
『水木さん。俺はさっきから、あのほっこり顔で禁域に渡ろうとしてる人が気になるんですけど。』
水木「え?禁域……なっ!アイツ……ゲゲ郎っ、戻れ!!」
俺の言葉で水木はやっとゲゲ郎の存在に気づいた。
急いで湖岸へ駆け降りて、戻るように訴える。
が、ゲゲ郎は一向に止まらない。
まったく……あの人は相変わらず、困った人だ。
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