検索窓
今日:27 hit、昨日:24 hit、合計:15,183 hit

猛暑 ページ1

この村は腐ってる。





死臭なんて可愛いものだ、

この村の人間は生きながら死んでいる。




屍が笑って踊っている。








無駄に広い一室。

ここは俺を大切に閉じ込めるための檻だ。








襖の開く音がすると、そこには沙代姉がいた。



黒紋付を着た沙代姉は、浮かない顔つきだった。







沙代「Aくん、お母様がそろそろ出てきなさいって。」

『俺は出ないよ。乙米さんには、時貞殿が死んだ時その場で高笑いしていた俺が出るのは申し訳ない、って言っておいてくれない?』

沙代「また地下の座敷牢に入れられてしまうわよ。」








窓の外を眺める俺に、沙代は近づいてそっと頭を撫でた。










『もう子供じゃない……』

沙代「ふふっ、もう泣かない?」










ぐずった子供をあやすように撫でる沙代の手を、払いのけることはできなかった。









沙代「そうだ、東京の方が来ているのよ。」

『東京?』

沙代「Aくんも昔は東京にいたんでしょ?ウチに用があるみたいだから、会ってみたら?それのついでに、お母様のところに寄ってあげればいいの、どう?」









沙代姉は俺の扱いが上手かった。

何より、龍賀家(ここ)では唯一心優しい性格の持ち主だった。





俺が乙米に折檻されるたび、こっそりおにぎりを差し入れてくれた。









『それじゃあ沙代姉も一緒に行こう。前に、東京に行ってみたいって言ってたからさ。』

沙代「うん。」











俺じゃあ沙代姉に東京の話は聞かせてあげられない。




この家に養子として迎えられるより前の記憶が、俺にはないから。

設定→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (62 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
232人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Mr | 作者ホームページ:Mobu  
作成日時:2023年12月16日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。