同郷 １ ページ13
「いいかい？君はここで待っているんだよ。」
『はい、分かりました。』
ここ岐山温氏の領域で、本日各仙門が門弟を連れ射術大会を実施するのだった。
しかし今回
参加しないものはどっか行け！とばかりな扱いではあるが、正直を言えば彼にとっては好都合だった。
最近まともな食事を一切取っておらず、そろそろ刺激的な料理を口に放り投げたくて仕方がないからだ。
『っ、これはなかなかの味付けだ。辛すぎずかと言って薄すぎない。絶妙なバランスだな！』
久々のオフタイムの如き態度で、食卓に並んだ料理を味わっていた。
箸はよく進み、彼がどれほど薄味に飽き飽きしていたのかが見てとれる。
しかしそんな平穏はすぐに掻き乱されることになる。
『うっま…』
「おいおい、誰だよドブネズミに餌をあげてる奴は。」
食卓には似合わない驕った態度の人間が、誰かに向かって暴言を吐き捨てていた。
『(っんと、気分悪ぃな。食事処では静かにしなさいって。)』
「おい！貴様に言っているんだ！おい！貧乏野郎！！」
「はっ、クソッ、触っちまった。
おい貴様、下僕同然のくせに岐山温氏の食事を堂々と口にするとは何様のつもりだ！！」
『何様以前に人間です。』
「ネズミの分際で…っ、こ、この俺に恥をかかせやがって！！」
『……。(器ちっちぇ……ってか、俺の噂って岐山温氏にまで届いてるの？恥ずかし…)』
「温氏の者を侮辱するとは……っ、貴様死にたいのか！！？
ならばお望み通り、この俺が粛清してやるっ！！」
そう言うとブタくんは剣を勢いよく腰から抜き、刃をチラつかせた。
剣を抜いた途端周りの客や店主は悲鳴を上げて建物の中へ逃げていった。
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