十章 ページ10
「乱歩さんが妾の治療を受けるなんて、珍しいねェ」
与謝野女医の言葉に、私はビクンと過剰に反応してしまう。
乱歩さんが怪我をしたのはー私のせいだ。
私、わたしは、芙美子さんの所に戻らないとー
「…………夏実?どうしたんだい?」
「わ、わたし、」
え、なにこれ、あたまがぐるぐるする。はへ?らんぽさん?らんぽさんってだれだっけ。わたしは、なにしてたの?
急に目の前の景色が変わった。
与謝野女医のりんかくがぐにゃりと歪み、芙美子さんの姿に変わる。
「ふ、みこ、さん」
「可哀想な夏実様………童の所へおいでくださいませ。そんなお顔はさせませぬ」
「ほ、んと………?わたし、ふみ、こさん、のこと、しんじていいの?」
もちろん。
彼女はそう云って、にっこりと笑った。
「さあ、お手を」
芙美子さんに向かって手を伸ばした、その時。
「『人間失格』」
遠くから声が聞こえてきて、目の前の芙美子さんが消える。
ハッと気づくと、私が手を伸ばした先にいたのは太宰さんだった。
「あれ?太宰さん………私は何を?」
「うなされていたよ。例の異能者ー林芙美子によるものじゃないかな?」
「芙美子さん?」
意識がはっきりすると、次第に理解した。
そっか。芙美子さんの異能ー『放浪記』か。
「それにしても恐ろしいね………君も油断したら駄目だよ。林芙美子の狙いは、君なんだからね」
太宰さんが珍しく真剣な顔で、私を覗き込んできた。
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たろ。(プロフ) - 最高 (2022年4月16日 13時) (レス) @page16 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - ありがとうございます!続編もどうぞよろしくお願いします!できるだけ早く更新しようと思っているので……… (2019年6月5日 6時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 続編おめでとう! (2019年6月5日 6時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉里 | 作成日時:2019年6月4日 18時