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九章 ページ9

「芙美子さんの『放浪記』はー新しい記憶を書き込むことができ、さらにその新しい記憶の幻覚を見せる事ができる、と言うもの」

芙美子さんに何とか帰ってもらった後、私の説明を聞き終えた乱歩さんは、少しだけ目を見開いた。
「林芙美子ー聞き覚えがあると思ったんだ。彼女は世界の軸が壊れかけたー『妄想ノ幻覚』事件の主犯だね?」

その問いかけに、私は俯いてから頷く。
『妄想ノ幻覚』事件ーパッとしない名前だけれど、内容は誰が聞いても心を痛める。
ありもしない記憶を、新たに書き加えられて、それによって幻覚を見、自ら命を落とすー“幻覚”とは、“新しく書き加えられた記憶”とは、一体何なのか。

被害者は、自分が人を殺したと云う嘘の記憶を書かれる。
そして、自分は犯罪者だと思い込み、警察に捕まるか捕まらないかの日々に震える。
やがて、この世に生きる意味を見出せなくなった人々は、自らの命を絶つー死者数実に三千人超。

芙美子さんはその『記憶を書き込む』部分を受け持っていた。つまりは『妄想ノ幻覚』事件の主犯だ。芙美子さんは、人殺しだった。

「それでも、芙美子さんは私を可愛がってくれました。犯罪者だって事は知ってます………でも、芙美子さんは悪い人じゃない」
云い終えた途端、乱歩さんが仰向けに倒れる。
「悪い、夏実………傷が、そろそろ限界だ」
「探偵社に帰りましょう。与謝野女医に治療してもらうんです」

私は乱歩さんに肩を貸すと、ゆっくりと歩き出した。

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たろ。(プロフ) - 最高 (2022年4月16日 13時) (レス) @page16 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - ありがとうございます!続編もどうぞよろしくお願いします!できるだけ早く更新しようと思っているので……… (2019年6月5日 6時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 続編おめでとう! (2019年6月5日 6時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉里 | 作成日時:2019年6月4日 18時

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