十一章 ページ11
「乱歩さん、起きて………」
硬く目を瞑った乱歩さんの手を握り、そっと呼びかける。
乱歩さんが与謝野女医の治療を受けてから一週間_______。
傷口は完全に回復しているけれど、未だ目を覚まさない。
「お願いします………乱歩さんが起きてくれなきゃ、何にもできないよ………」
あれから何度も幻覚を見た。
その度に太宰さんに無効化してもらって、終いには太宰さんの家に泊めてもらう事になった。
じーっと乱歩さんを見つめていると………
「あ、れ」
まただ。
乱歩さんのりんかくがぐにゃりと歪んで、芙美子さんの姿に変わっていく。
「太宰、さん………」
「『人間失格』」
優しく肩を叩かれて、目の前で手を振るのは太宰さん。
「恐ろしい異能だね、全く………乱歩さんはまだ目覚めないのかな?」
「…………やっぱり駄目だ」
不意に呟いた私に、太宰さんは驚いたような表情をした。
「私が………芙美子さんの所に行かないと。これは、
立ち上がった私の肩を、太宰さんが摑んで引き止める。
「駄目だ、危険すぎる」
「危険?」
私は切羽詰まった顔の太宰さんに、余裕たっぷりの笑みを見せた。
「乱歩さんを助けるために必要な“危険”なら、喜んで飛び込みます」
足は震えていた。
それは、きっと太宰さんも気づいていた。
けれど、もう引き止めてこなかった。
これは、私と芙美子さんの戦争だから。
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たろ。(プロフ) - 最高 (2022年4月16日 13時) (レス) @page16 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - ありがとうございます!続編もどうぞよろしくお願いします!できるだけ早く更新しようと思っているので……… (2019年6月5日 6時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 続編おめでとう! (2019年6月5日 6時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉里 | 作成日時:2019年6月4日 18時