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三十二章 ページ32

「……………………………夏?」

お母様は震える声で、それだけ云った。
背後に立っていた男の人も、見開いた目で私を見つめている。
「お母様、私、会いたかった」
微笑みながら云うと、お母様が目の前に駆けてくる。
お母様の温もりを感じて、そっと目を閉じた。

その時。
ポケットに入っていた何かが、大音量で音楽を鳴らした。
探ると、硬い感触。携帯電話だろう。
何の操作もしていないのに、声が漏れてくる。
『罪人、川海咲子。容疑は殺人。ー娘を殺した罪で、処罰する』
私は目を見開いた。
それはー

それは聞き覚えのある、誰かの声だった。

誰?
無実のお母様を処罰しようとしているのは、誰なの?
考える間も無く、お母様が私の洋服のポケットに手を突っ込む。
携帯電話を取り出し、私を突き飛ばした。
「えー」
「夏!」
呆然と見つめていたお母様が、叫ぶように云った。

「愛してる。産まれてきてくれてありがとう。妾の異能のせいで、振り回しちゃってごめんなさい」

破裂音。
携帯電話が爆発した。
お母様は最期の最期に、微笑みを私の頭に焼き付けて逝った。
遠くで誰かの叫び声がした。
自分の喉が痛み、声が枯れていた。それで気づいた。
叫んでいたのは、他の誰でもない私だった。

「うわあああああぁあああああああっ‼」

叫んでいる最中に判った。
あの声の正体、それは、

ー幼い頃に亡くなってしまったはずの、お父様だった。

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茉里 - ありがとうございます!続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします! (2019年6月4日 19時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!続編のほうも応援させていただきます!! (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ!勿論です! (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました!新作書いたらまたよろしくお願いします! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉里 | 作成日時:2019年5月27日 21時

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