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十七章 ページ17

「鍵寺様、いるんですか?」

おばあさんが云うとほとんど同時に、おじいさんの魂がスッと躰に入り込む。
私の躰がぐにゃりと歪んで、少し腰が曲がったおじいさんに姿を変えた。

代わりに私の、原型をとどめていないふよふよとした魂が宙に浮かんている。
2人はしばらく見つめ合い、やがて手を握り合った。
「仁子、久しぶりじゃな。元気じゃったか?」
「今元気になりましたよ。鍵寺様に会えたんですから」

「鍵寺……その名、懐かしいのう。鍵寺と呼んでくれたのは仁子だけじゃったから」
「あら、貴方の名前は『大宮鍵寺』ではないですか。皆様なんて呼んでいたんです?」
「大宮さん………じゃな」
「それでも、鍵寺様は鍵寺様ですよ」

くすくすと笑う仁子さん。その笑顔は今までで一番輝いていた。
「幽霊の女の子に助けてもらった」
「まあ、そうなんですか?」
「ああ。…………儂の棚に、あれはまだ入ってるか?あれをあの子にあげてくれ」
「でも、あれはー」
「構わん。あげておくれ」

何やら強い調子で説得した鍵寺さん。仁子さんは頷いて、ハッと目を見開いた。
「鍵寺様、躰がー」
「あ………そろそろ行かないといけないのう」
消えかかってきた躰を見下ろして、鍵寺さんは力なく微笑む。
「最後に聞いてくれ、仁子。儂はー」
「最後の言葉みたいに云わないでくださいよ」
「否、最後の言葉なんじゃ。仁子」

じっと仁子さんを見つめる鍵寺さん。
「愛してる。儂の嫁になってくれてありがとうな」

「鍵寺さん………!」

鍵寺さんの躰が消える。
ふわふわとしていた私の魂は、私の躰を取り戻した。

後に残ったのは、悲しそうな笑みを浮かべた仁子さんと、それを見つめる私と乱歩さんだけー

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茉里 - ありがとうございます!続編もじゃんじゃん更新しますので……よろしくお願いします! (2019年6月4日 19時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
ク レハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!続編のほうも応援させていただきます!! (2019年6月4日 18時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - ええ!勿論です! (2019年6月3日 18時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)
茉里 - 最後まで読んでくださってありがとうございました!新作書いたらまたよろしくお願いします! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 0903b0c425 (このIDを非表示/違反報告)
カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)(プロフ) - 完結おめでとうございます! (2019年6月3日 17時) (レス) id: 26ee7c4c14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茉里 | 作成日時:2019年5月27日 21時

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