【9】付き合った訳 ページ9
でも、実際そうだ、私の恋愛感情だと思っている感情が、
もし別物だったなら。
木兎に対して、何らかの別の感情を持っている事になる。
だから、自分で確信が持てるまで、誰とも付き合う気はなかった。
木兎に対して、アクションを起こす気もなかった。
しかも、木兎に限っては好きな人がいるとかいないとか。
私が今踏み込むのは間違っている、そう思っていた。
「Aはさ、好きな人、いないの？」
『え？…いやぁ…』
「じゃあさ、俺がその好きな人になっちゃ駄目？」
『…え？……ん？』
「Aが、俺を彼氏にしたい、って思ってくれるように頑張るからさ」
『…え、待って、木兎好きな人いないの？』
「え？なんで？」
『木兎の好きな人に勘違いされちゃうよ？そんなの』
木兎は1組のなんとかさんが好き、という噂を聞いたことがあった。
だから、一生片思いで終わらせるものだと思ってた。
なにを言い出すんだ、うちの次期キャプテンは。
「なに言い出すんだよ、俺が好きなのはAだぜ？」
『……え、嘘』
「こんなところで冗談言わねーって」
…なにこれ、告白？、と1人大混乱を起こしていれば、京治の走る音が聞こえてきた。
木兎が、私の方を見て、一言だけ言い残し、戻ってきた京治と話し始めた。
…木兎はあの時、確実にこう言った。
「俺の事、好きになってよ」
と。
キザなセリフでもカッコよく見えるのは木兎マジックだ。
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作者名：莉子 | 作成日時：2024年1月4日 1時
