【42】面倒臭い ページ42
『トーナメントか、最初どこと?』
「初っ端青葉城西。
烏野は研磨とチビちゃんが仲良いからやってるし、
おたくの梟谷は言うまでもないけどね、青城はね…」
『データ無いからねぇ。
…及川徹は噂通り、キモいよ』
「キモいってなに?」
『…頭おかしいのにちゃんと上手いから、キモい』
「…嫌いだねー宇佐埜ちゃん」
『めちゃ嫌い』
ウォーミングアップする音駒を目の前に、
クロくんとそんなことを話す。
もう私がマネ代理をやるなんていつも通りなのに、
音駒の皆はいつもありがとう、と言ってくれる。
光太郎並みにガキな主将でも、
その全体の空気を作れるクロくんは素直に尊敬している。
…が、それは及川徹もだ。
でも、と私は噤んだ口を、もう一度開いた。
『…でも、悪いやつじゃないよ』
「…ふぅん、
彼氏のぼっくんさえほぼ褒めない宇佐埜ちゃんが、
ストレートに褒めるなんて珍しいね」
『だって私、高校バレー部で1番青葉城西が好きだもん』
「へぇー、意外かも。
…ていうかさ、僕たちは?って言いたいところだけど、
それ以前に梟谷どこ行ったの」
『愛国心あっても好きな国が違うのと一緒』
「…どうしたの宇佐埜ちゃん、なんか今回変だね」
変か、…変かもしれん。
青葉城西は、努力の塊だなっていつも思う。
…いや、別に他のチームが努力してないとかじゃなくて、
1番努力そのものを感じるプレーをするというか。
と、自分に、謎の言い訳をして、
クロくんと連れ立って控え室を出れば、
見慣れに見慣れた顔が現れた。
「…Aちゃん」
「ちゃん!?おまっ、影山、ちゃんとかいうの!?」
「日向うるせぇ!!」
なんだなんだ。
ドアを開いて3秒立たないうちにこれだ。
なんでこうも、バレー関連の人は毎回こうなるのだろうか。
項垂れて額に手を当てれば、
クロくんのくすくす笑う声が聞こえた。
「ほら静かにしろって、変人コンビ。
宇佐埜様怒らせたら終わるぞ」
『……クロくん、光太郎のストレート顔面で受けるのと、
及川徹の自慢話を3時間聞くの、どっちがいい』
「うわどっちもやだ…」
『次変なこと言ったら強制両方コース』
「口を慎みます」
じゃあね、飛雄、と手を振ってクロくんと、
梟谷の控室の方に足を進めた。
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時