【5】付き合った訳 ページ5
眠い…、と珍しく、友達と喋らずに教室で1人、うたた寝をしていたあの日。
「Aいる！？」
めちゃくちゃに聞き覚えしかない声が聞こえてきて、私は無視を決め込んだ。
休み時間、教室に殆ど人がいて、皆お喋り中。
びっくりするくらいに、教室がシーンとなった。
木兎め、今日は眠いからって友達のご飯の誘い断ってまで寝てたのに。
これで木兎達と話したら、なんなんこいつってなるでしょ。
「見て木兎くんだ」
「顔良いね、やっぱり」
「木兎くん、！どうしたの？」
クラスの一軍女子がザワザワとしだす。
きっと木兎に話しかけたのは、ボス格の木村礼奈。
……頼む、私には飛び火しないで。
元々派閥とかヒエラルキーが嫌いで、秀才クラスに入ったのに。
中等部上がりが今年は多いらしく、上下関係がめちゃくちゃにはっきりしていた。
だから、ヒエラルキーから逸脱して、友達3人で固まっていた私達は、何かと一軍の目の敵になっていた。
人気者の木兎が私を呼んだら、一軍が気に食わなくなるのは目に見えてる。
…が、そんなことお構いなしの木兎は、普通に私を呼んだ。
「ん？あぁ、宇佐埜に用があって！」
「宇佐埜、…Aのこと？」
「あぁ、マネージャーだからな！」
「……木兎さん、A姉さんいないかもしれませんし、出直しましょう」
救世主京治。
流石、私の従兄弟だ。
お願いだから木兎を連れて帰ってちょうだい。
「A今いないっぽいんだよねー…、
折角だし、うちらと喋って待ってようよ」
礼奈に関してはいることが分かってるくせに、木兎と喋りたさに嘘を付いていた。
礼奈辺りはよく分からん男子と複数人グループ的な感じでつるんでいる。
木兎来いよーとか言ってる中等部上がりの男子にイライラしつつ、京治の身を案じた。
「んー、いや、いいわ、俺が用あるの、宇佐埜だからさ！」
「…そんなにマネージャーって大事なの？」
「おう！宇佐埜たちがいなかったら、多分強豪じゃねぇ！」
「ふーん」
やめて木兎、めちゃくちゃスカッとはするけど、さり気なく礼奈の機嫌損ねてるから。
ど、どうしようこれ。
そう1人で、冷や汗をかいていたら、最も恐れていたことがおきた。
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作者名：莉子 | 作成日時：2024年1月4日 1時
