【40】行き過ぎたら ページ40
この日を境に、光太郎は怪我することが多くなっていった。
明らかにおかしい回数なのに、
どう見ても自分では作れない傷だらけ。
そんなこんなで1週間続き、総怪我回数は13回。
この1週間、泣くことはなかったものの、
よりベッタリになり、登校下校、休み時間は全て、
光太郎になった。
そして1週間後、バレー部は遠征に行くこととなる。
…光太郎には、午後から行くから、と、
午前は私だけ、学校に残ったのである。
休み時間、珍しく廊下に出ず、机に突っ伏した私を見て、
莉子が私の肩を叩いてきた。
「…A、生きてる?」
『なんとかね…』
「…最近さ、木兎くんとずっといるよね…?」
『…おん』
「束縛、されてる?大丈夫…?」
そう言われて、ガバッと身体を起こす。
心配そうな顔をした莉子が、目の前に立っていた。
…なんなら、莉子以外のいつメンも、そこに立っていた。
あぁ、心配させたのか、
そう思って、私は笑った。
『大丈夫、自分の意志で一緒にいるから』
「…でもさ、A、
…最近表情暗いよ、隈も酷いし」
『…隈?』
「うん…、木兎くんは、ずっと一緒にいないと駄目なの?」
いやぁ、まぁ…、と言葉を濁せば、莉子が、少し怒ったように、
私の机に手をついた。
「…私、そんなにAに取って頼りないかな」
怒ったように、されど泣きそうに顔を歪めた莉子を見て、
思わずハッとした。
莉子たちになら、言ってもいいんじゃないか。
うっかり気が緩んで泣きそうになり、頑張って笑顔を作る。
『…ごめん、嘘。
全然大丈夫じゃない。話聞いて』
すると、莉子頼んだよ、と言って、他のいつメンが席に戻った。
莉子は授業の2分前だというのに、
私の手を引いて立ち上がらせた。
『莉子、どこ行くの?』
「授業ずらかんぞー!
大丈夫、愛海たちがなんとかしてくれるから!」
『えぇ!?』
私は、初めて授業をサボった。
…屋上の風は、思ったより気持ち良かった。
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時