【38】行き過ぎたら ページ39
体育館に京治と走り入って、
珍しくすみっこにすわる主将を発見する。
普段は、体育館のど真ん中でスパイク決めてるのになぁ…。
体育座りから片足伸ばした格好をする光太郎は、
私を見た瞬間に泣き出した。
…いやぁびっくりした、皆がいる前で泣いたのは初めてだった。
でももうここまで来ると慣れっこな私は、
光太郎の目の前に座り込んで、
バレーのせいで少し崩れた髪の毛をくしゃくしゃに撫でて、
どうしたの?、と声を掛けた。
髪の毛をくしゃくしゃにされるにともなって、
片目を瞑った光太郎が、口を開いた。
「怪我した」
『どこをどうやったの?』
「膝、真正面からスパイク受けた。
あと顔、誰かの爪当たって血ぃ出た」
『…二箇所ね』
「…A、手当てして」
『京治にやってもらうのは…?』
「…!!」
グズグズ鼻を言わせながらも、病状を伝えてきた光太郎。
…まさか、本当に偶然か…?
両方とも、自分で付けられるような傷ではない。
とりあえず全員の爪チェックを、そう思いながら、
京治に手当てを任せてもいいか、そう聞けば、
光太郎は顔色を変えた。
「Aに手当てして貰わないと意味無いだろ、?
Aがやって、!」
『…私がしないと意味が無いか…。
京治のほうがなんなら手厚いと思うけど…?』
「Aじゃなきゃ俺練習戻らない!!」
普通に何いってんだこいつ、と、
思わずうっかり表情にモロ出して、口が開いた。
と、視界の端に映り込んだ京治が、
私と同じ表情をしているのが見えた。
光太郎の目に反射する私と、全くもって一緒である。
ただ、目の前の光太郎は、俺ここから動かないから!!と、
そっぽを向いてしまった。
京治と顔を見合わせる。
…と同時に、木葉くん、猿杙、小見やん、鷲尾、尾長が、
見たことない顔をしてこっちを見てるのが分かった。
…いやそらそやろ。
と、いうわけで、光太郎、保健室行くよ、と手を引いて、
立たせた光太郎と体育館を出る。
呆気に取られた皆と、口が開いたまんまの京治。
京治にグッドサインして外に出てくれば、
赤葦どういうことだ!!!と謎の大声が聞こえてきた。
ごめんね京治☆
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時