【37】駄目でした ページ37
「…で、なんだったの、姉さん」
『な、なんのことでしょうか』
「いや、木兎さん泣いてたじゃん。
泣いてたの?それとも泣かせたの?」
部活中、私と京治だけ抜けて、空き教室で向き合う。
椅子に座る京治と、目の前の席の机に座る私。
…いやー、従兄弟なのに顔がコワイ。
年下の貫禄じゃないって、そう思いながらカタコトで、
ナカセマシタ、と言った。
すると、聞いた当本人のはずの京治が目を丸くした。
「泣かせた!?
姉さんが、木兎さんを?
なにしたの姉さん、木兎さんの親でも殺したの?」
『罪犯すわけ無いでしょおバカ』
「だって、姉さんたち円満カップルだったじゃん」
『そういう京治はどうなのよ、莉子といい感じだったじゃん』
「……つ、次会う約束、した」
私以上にカタコトで言った京治に、声にならない悲鳴を上げて、
クセっ毛の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
『なに、ついに彼女できちゃうの?
でかした色男、莉子モテるから頑張れよ〜!』
「モテるの!?」
『当たり前でしょ馬鹿たれ。
あんだけ可愛かったらモテるわ』
「嘘……
じゃないよ、なんで泣かせたの」
『あちゃあー』
軌道を変える作戦、失敗☆
…いや本当にどう言い訳しよう。
『…なんか、』
「うん」
『…ぅ、う、うわ、』
「…うわ、うわあご?」
『なんで?』
「なんとなく」
『浮気だよ』
「浮気か」
そう言って、一回納得したように、
地面に視線を落とした京治が、
今まで聞いたことない声量で、浮気!?と繰り返した。
『うんそう』
「姉さんが!?
誰と!!」
『あ、違う、そう勘違いされただけ』
「誰と?」
『河城先生』
「はぁ…?」
呆れたように片眉を上げて、京治がため息を付いた。
「木兎さんが泣くって、どれだけ疑わしいことしたの…」
『いや、職員室に話に行っただけ』
「…え?それだけ?」
『うん、月に2回くらい話してただけ』
「…月に2回?」
『尾長の成績やばくて合宿無理かもって』
「そうなんだ…」
『マジでそれだけ』
尾長の成績に納得して、浮気が理解出来てない京治が、
複雑そうな顔をした。
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時