【36】駄目でした ページ36
『…先生と話してただけ。
これ以上なにを知りたいの?』
「…なんのこと話してたの?」
…今日は夜のこともあったし、イライラしてたんだ。
私は、ガッツリ正面から睨んで、声を荒げてしまった。
『尾長の成績について、数学の河城先生と話してた。
このままじゃ合宿参加できないかもしれないけど、
言いふらすことじゃないから、
先生と二人で5月くらいからずっと、
どうしようかって話してたってだけ。
……こんな、私じゃない人のプライベート知って楽しい?
聞くことじゃないって言ったよね?』
そこまで早口で捲し立てて、やば、と思う。
言い過ぎた、そう思って唇を噛んだ。
呆気に取られた光太郎の目から涙が溢れる。
…誰もいないとは言え、ここは職員室前の廊下。
誰がいつ来ても不思議じゃない。
あぁーもう、と思わず焦りで口にした私は、
光太郎の手を取って、誰も来ない踊り場に来た。
『…ごめん、言い過ぎた』
「…俺が悪い、ごめんA。
Aは部活の為にってやってくれてたのに」
『…いや、私が悪いよ。
ごめんね、ちゃんと説明すれば良かった』
片手を掴んだまま、向き合ってとりあえず謝る。
掴まれてないほうの手で、涙を拭った光太郎。
ごめんね、と下から見上げれば、必死に首を振られた。
今のは私が悪かった、
…光太郎の変化に、ちゃんと付いてこられてなかった。
ごめん、そう言って顔を見ていれば、予想外の声がした。
「…A姉さん」
『…げっ』
「げって、…あれ、木兎さんまで。
部活始まりますよ」
タイミングが悪いぞ赤葦京治。
……いや、悪いどころじゃない、最悪だ。
頭を抱えれば、京治は当然歩み寄ってきた。
…さぁ、なんて言い訳しよう。
顔を上げれば、ギョッとした京治と目があった。
…ですよねー、主将泣いとるもん。
いやぁー困った困った。
…おわたな。
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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時