【35】駄目でした ページ35
「…A、なにしてたの？」
失礼しました、そう言って職員室を出れば、
部活前に一緒による、と待っていてくれた光太郎が、
顔を顰めてそう言った。
翌日、結局グズる光太郎を置いて親にバレぬよう、
一度家に戻り、そのまま光太郎の家まで迎えに行った私。
…なんでか知らないけど、今日はやけにベッタリで。
お昼ご飯も食堂で二人がいい、と言われ、
別にこだわりもないしで、食堂で食べた。
…が、ガヤの「木兎先輩カップルだぁ〜！」
という、聞き慣れたはずの声を、すごく嫌そうにしていた光太郎。
流石に、顔が怖すぎて、顔怖いよ、どうした？、そう聞けば、
ケロッとしていつもの笑顔に戻り、なんでもない！と言われた。
…が、放課後、職員室からでてくると、顔がもとに戻っていた。
『なんでもない、大丈夫』
「…なんで言わないの？」
『別に、言うほどのことでもないよ』
…まさか、尾長くんのテストヤバいよ、という話を、
数学の河城先生としていたとは言えず。
(河城先生は若いイケメン)
尾長くんの名誉にも関わるし、
少なくとも私から洩らしていい情報じゃない。
言うほどのことでもないよ、と首を振り、
そのまま歩き出そうとしたら、痛いほど強く、
手首を掴まれた。
『！！』
「…なんか隠さないといけないこと？」
『…光太郎、離して』
「やだ」
『……痛いんだけど』
痛い、そう強めに言って少し睨めば、ハッとした光太郎が、
ごめん、そう言って手を離した。
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作者名：莉子 | 作成日時：2024年1月4日 1時
