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【33】駄目でした ページ33

『光太郎?



そのボリュームだとご両親に聞こえない?』



「い、今俺しかいない、」



『…今から行くの?それとも朝?』



「…今」



『分かった分かった。



落ち着いて、ゆっくり息して、光太郎』



「……大丈夫、」



『うん、大丈夫大丈夫』








大丈夫大丈夫、と繰り返しつつ、黒いオーバーサイズのパーカーを羽織り、そっと家を出た。



まだ電話越しで泣いているのが聞こえる。








『…光太郎、今家いるよね?』



「家いる」



『ん、分かった。



走ってく。一旦切るよ』



「…っき、切らないで、!」









そう電話越しに悲鳴に近いものを上げた光太郎。



今日は酷い方だな。



そう思って、電話を持ち直す。











『大丈夫だから、ちょっと待ってて。



鍵、開けといて。



大丈夫だから、落ち着いて光太郎』



「…うん、落ち着いてる、」



『うん、大丈夫大丈夫。



一回切るからね』










そう言って、電話を切る。



っせーの、そう自分に声を掛けて、光太郎の家までひとダッシュ。



光太郎に言ってあった通り、鍵は開いていた。



そーっと鍵を締めて、光太郎を探し出した。



…多分、いつものように光太郎の部屋だ。



そう思いつつも、一応光太郎の名前を呼びながら、



光太郎の部屋のドアを開けた。



…想定したまんまの光太郎が、そこにはいた。



ベッドの下に座り込んで、体育座りをして、



膝に自分の顔を埋めている。



肩が震えていて、やっぱりか、と思う。



駄目だ、変な顔をするな、



一回顔を顰めて光太郎を取り乱させただろう。



そう自分を律して、優しめの笑顔を浮かべて、名前を呼んだ。









『光太郎』



「…A、A!」



『大丈夫大丈夫、ここにいるから』








名前を呼んだ瞬間、涙でぐしょぐしょの顔を上げて、私の足元に縋りついた光太郎。



光太郎と同じ高さまで座り込んで、光太郎を正面から抱き締めた。



しゃくりあげて、嗚咽が止まらない光太郎の背中を擦る。

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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時

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