【21】メンヘラの出現 ページ21
焦って、普段は絶対にしないのに、靴の後ろを踏む。
パコパコと脱げかける靴を必死に引っ掛けて、校門により掛かる光太郎を見つけた。
『光太郎!』
光太郎がパッとこっちを見たのが分かる。
普段待ち合わせになると、お互い歩み寄るのだが、光太郎が歩いてこない。
…相当怒らせたか、やっちまったな、そう思って、慌てて走り寄った。
絶え絶えの息を、地面を見て整え、
…いや整わなかったんだけど、とりあえず顔を上げる。
唇を噛んでるのが見えた。
泣きそう、…というか泣いてるなこれは。
怒ってる、ではなく泣いた、の方だという確信になった。
『光太郎、…っハァ、ごめん、先生と話してて気付かなかった、っは、』
「…Aに嫌われたかと思った」
『なんで、嫌うわけ、っハァ、ないじゃない、』
最近、嫌われる、嫌われた、と言葉にすることが多くなった。
…その分、大好きだよ、や、大丈夫、と言う回数が増えた。
大丈夫大丈夫、大好きだよ。
何度こう言うようになっただろう。
私が、おかしくなりそうだった。
光太郎?と名前を呼ぶと、光太郎の頬に涙が伝った。
『ほらしゃがんで、…どうしたの』
少ししゃがんだ光太郎の頬の涙を親指で拭う。
拭うと、スッと元の姿勢に戻って、どうもしない、と言われた。
330人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時