【3】異変 ページ3
『え！？どっ、…え？どうした？』
「ごめん、俺邪魔なの気付かなかった、ごめん、」
『えっ…、いやそういうことじゃない、よ？』
ふぇ、と小さく声を漏らす光太郎が泣き止んでくれない。
こっ、光太郎、光太郎？と必死に名前を呼びながら、
光太郎の濡れる頬に手を伸ばした。
光太郎が強めに自分の服の袖で、涙をぐいっと拭う。
慌ててその手を止めた。
『こらっ、駄目だよ、強く顔擦ったら。
肌荒れちゃうでしょ、折角の光太郎の綺麗な肌が勿体無い』
手元にあったティッシュをｼｭｯと音を立てて取り、手を退けた光太郎の頬にぽすっと付けた。
本当にどうしたのだろうか、様子がおかしすぎる。
とりあえず、そのままティッシュをぽんぽんとして、光太郎の頬を伝った涙を吸い取らせた。
鼻をすすりながら、しゃくり上げる光太郎の背中を擦る。
私を挟むために伸ばされた足は、私が隣に座ったことで、胡座になっていた。
暫く落ち着くまで、背中を擦っていたが、そのうち、いつもは考えられないボリュームで小さく小さくごめん、と呟いた。
『んーん、Aもごめんね。
光太郎、大丈夫？』
「…Aは、さ、俺のこと嫌い？」
『大丈夫、ずっと大好きだよ』
「…邪魔じゃない？」
『光太郎が邪魔なわけないじゃない』
「…ごめん、A」
『大丈夫大丈夫』
背中を擦り続けながら、光太郎の顔を覗き込んだら、これまた珍しい困り眉の光太郎と目が合った。
潤んだ茶色の目が、私に縋るようにこっちを見た。
ぽすっ、と光太郎のセットされた、逆立つ髪に手を置いて頭を撫でてみる。
普段は絶対しないけど、泣かせてしまった負い目からである。
するとスッと目を細めた光太郎が、パチっと目を開けて両手を差し伸べてきた。
本当に今日はどうしたんだろうか。
こんなに精神不安定になっている光太郎は見たことがなかった。
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作者名：莉子 | 作成日時：2024年1月4日 1時
