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【20】メンヘラの出現 ページ20

「あれ?宇佐埜さん外出てたの?……あら、お帰り?」



『はい、すいません、木兎が思ったより早く終わったらしくて』






若い女の子の先生。



話が面白く、授業で人気がある先生で、仲が良く、雑談中に恋バナになり、光太郎の話をしてあったのだ。






「随分慌ててるわね、木兎くんそんなに待たせちゃってたの?」



『いや、わ、わからないんですけど、…いてっ、なんか泣いてて、』



「…泣いてる?あの木兎くんが?



やだぁ宇佐埜さん、冗談なんて」







先生の何気ない一言だったのだろう。



だが、私の心に違和感を生み出すには十分過ぎた。



冗談。



そうだ、私以外の人にはいつも通りの木兎光太郎に見えるんだ。



…私がおかしくなった?



そう思って、そんなことはない、と思い直す。



改めて、あの二人きりのときの光太郎は冗談、と捉えられてしまうほど、異常なことを知る。



……いや、そんなことを考えている暇はない。



ピタッと動きが止まった私を見て、先生が恐る恐る私の名前を呼んだ。







「…う、宇佐埜さん?」



『あぁ…、いえ、そうです冗談です。



あの木兎が泣くわけないじゃないですか、ドキッとしました?』



「いや、あの木兎くんにも知られざる一面があるのかと思って慌てちゃった。



ごめんなさいね、冗談に真面目に冗談?なんて返しちゃって。



木兎くん待たせてるんでしょ?



ほら、早くお帰りなさい、ほらほら」



『やだなぁ先生。



そんなに私邪魔ですか?笑』







先生とケタケタと笑いながらそんな事を言って、教室を出る。



…冗談じゃない。



私は手を振り返してくれる先生がドアを締めたのを見て走り出した。

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作者名:莉子 | 作成日時:2024年1月4日 1時

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