一世一代の大勝負3 ページ24
「くっ…あはははっ」
唐突に笑い声が耳に響いた。
え、と驚いて思わず顔を上げると
お腹を抱えて笑う"石川祐希"の姿があった。
しかも笑いすぎで涙出てるし……
どこにそんな笑う要素があったのだろうか。
と、至極まじめに彼に頭を下げたことに
ひどく後悔を覚えた。
ひとしきり笑った後
「監督?どう思います?」
と、有志くんの隣にいたおじさんに
意見を求めたのだった。
え…監督!?
バッと勢いよく振り返った私に
「監督」と呼ばれたおじさんは
「歓迎するよ」
と笑顔で短く答えた。
え…え…え…
突然の出来事すぎて頭の理解が追いつかない。
フリーズしていた私に
今まで黙っていた有志くんが
「A！ありがとう！」
と、私の大好きなキラキラ笑顔で
私を力強くぎゅっと抱きしめた。
今までよりもずっとずっと明るく輝く
キラキラ笑顔だった。
「監督！それから"石川祐希"さん！
本当にありがとうございます!!!」
有志くんに抱きしめられたまま
私は心から感謝を伝えた。
一世一代の私の大勝負は見事大成功。
なんの勝算もなかったのだけれど
本当に行動に移してよかったと思えた。
あのまま今までと同じように
有志くんを無理に忘れようと
味気ない寂しい日々を送るのは
もう本当にごめんだった。
本当に本当によかった。
これも全部全部、有志くんのおかげだ。
精一杯プレーする君の姿が大好きで
バレーボールを見つめる君のまっすぐな瞳が大好きで
力強いサーブを放つ君の逞しい腕が大好きで
どんな試合も全力で挑む君の信念が大好きで
いつも以上に輝いている有志くんが大好き。
"有志くんへの大好き"が
私の背中を押してくれたんだよ。
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作者名：天然水。 | 作成日時：2019年10月22日 23時
