一世一代の大潜入2 ページ20
彼を見送った私は、急いで彼の後を追った。
一世一代の大勝負に出るためだ。
今回の合宿先はここからそう遠くない、
と事前に聞いていた。
正確な場所も把握している。
だから、自分もついていける、
そう思ってしまった。
だいぶ序盤で彼のペースについて行けなくなり
事前に聞いていた場所を調べて
マップアプリを頼ったり。
それでも迷ったり。
順調とは言いがたかったが
ついに…辿り着いてしまった。
大学の何倍もある施設に一瞬身が怯む。
ついに来てしまった。
ここに来て、やっと冷静になった自分に気づき
やはりとんでもないことをしてしまったのではないか、
と怖くて怖くてなかなか一歩を踏み出せずにいた。
ふと、近くで私の大好きな音が聞こえた。
体育館でよく耳にする、あの音だ。
それに勇気づけられたように
私は震える足でゆっくりゆっくり
進んでいった。
はず、だったのに……
「なんか…大丈夫?」
急に後ろから肩を叩かれ、声を掛けられた。
「ヒッ」と恐怖のあまり声が出ない。
それ以上に叩かれた肩が、激しくビクついた。
怖くて振り返れなかった。
やっぱりダメだったんだ、
これは相当なお叱りを受ける。
ダラダラと冷や汗が止まらない。
全く動かない私に痺れを切らしたのか
肩を叩いた相手が私の顔を覗き込んできた。
「おーい、ほんとにだいじょ……
あれ、君って……」
チラリとほんの一瞬目が合った瞬間
「どっかで見たことある」
と呟いた。
え、もしかして知り合い?!
ここに乗り込んできて、心細さを感じていた私は
知り合いかもしれない相手の顔を確認しようと
俯いていた顔を勢いよく上げた。
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作者名：天然水。 | 作成日時：2019年10月22日 23時
