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一生懸命に頬を赤らめながら主張するフルーレさんに、なんだか胸があたたかくなる。
『ありがとうございます、フルーレさん。フルーレさんが作るお洋服、楽しみにしています』
「こちらこそありがとうございます、主様! 俺が腕によりをかけてお作りしますからね! 楽しみにお待ちください! ……ですが、今はお召しになられたワンピースの余ったところを一時的に詰めちゃいますね」
そう言ってフルーレさんは部屋に入り、「それでは少し触れますね」なんて一言断って、ワンピースの袖に触れる。
「……細くて折れてしまいそうですね」
思わずといった様子でポツリとこぼれたフルーレさんのひとりごとに、私は笑って返した。
『ふふっ、まだ骨が折れたことはありませんよ?』
「し、失礼しました、主様!」
慌てて私から離れ、直角に腰を折ってまで頭を下げたフルーレさんをなだめて、頭を上げてもらう。
謝らせるつもりなんてなかったのに、悪いことをしてしまいました……。
『お気になさらないでください。私が痩せぎすで、少し心配されただけですよね? 私は気にしていませんし、かえってすみません』
「……許してくださるなんて、本当にお優しい方なんですね、主様は」
『そんなこと、ありませんよ……』
ささいなことで私を“優しい”と評してくださる執事のナックさんとフルーレさんに、この世界でどのような扱いを受けてきたのか想像して胸が痛くなる。
本当に、私はなにも大したことはしていないのに。
あっという間にフルーレさんは、私が着てもスッキリと見えるようにワンピースを直してくださった。
次にフルーレさんはメジャーを手に取る。
「主様があちらの世界にお戻りになられている間に他のお洋服もお直ししますので、ついでに採寸もしちゃいましょう」
『は、はい、お願いいたします』
真剣な表情で私の採寸を始めたフルーレさんに引きずられてか、私まで真面目な顔になってしまった。
「力は抜いていてよろしいんですよ、主様」
『は、はい……!』
そうフルーレさんに言われても、慣れないことで緊張してしまう。
フルーレさんもそんな私に気がついていて、緊張をほぐすためか今まで作った服について話してくださった。
なんでも、ここの執事たちの服もすべて衣装係で作っているらしい。
しかも今の衣装係はフルーレさんお一人とのこと。
すでに会った執事たちの凝った燕尾服を思い出す。
『フルーレさんの作る素敵なお洋服に見合うような素敵な存在になれるように、私もこれから頑張りますね……!』
「今の主様に似合うお洋服をお作りしますので、無理しなくていいんですよ、主様」
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悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます!のんびり更新ですがよろしくお願いします…! (5月3日 22時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠莉 | 作成日時:2024年3月14日 22時