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ナックさんと初めて会った、自室がある2階に戻る。
スタート地点に逆戻りだ。
部屋に入り、今度は二人掛けソファに案内されて座ると、やっとひと息つけた。
慣れないことが続いて、自分が思っていたよりも疲れてしまっていたのかもしれない。
『すみません、ナックさん。私に付き添っていただいて』
「いえいえ、主様。素敵な可愛らしい主様とご一緒にいられて、このナック、幸運でございます」
『そんな……大袈裟ですよ』
「大袈裟ではございません、主様! 主様ほど我々悪魔執事に優しく接してくださる御方なんてこちらの世界ではございませんよ」
ナックさんの言葉に、私をこの世界に導いた黒猫ちゃんの言葉を思い出して、自然と眉が下がってしまう。
“あなたに彼らを救ってほしいの”、でしたか……。
私にしかできないこと、とはいったいなんでしょうね。
悪魔執事たちの悪魔の力を解放して、天使を倒すこと……なのですかね。
それはこの世界の人類を救うことであって、彼ら⸺悪魔執事の皆さんを救うことではないような気がしますし……。
どうしたら彼らを救うことにつながるのでしょうか。
私は、ここでいったい何をしたら良いのでしょうね。
そう心の内でこぼしても、当然答えは返ってこない。
黒猫ちゃんは、“また会いましょう”なんて言っていたのに。
“また”はいつになるのでしょう。
そのときになったら、私が成すべきことを教えていただけるのでしょうか。
ぼんやりと私がこの世界に導かれた理由を探している内に、ナックさんが私に紅茶を淹れてくださった。
『何から何までありがとうございます、ナックさん』
「ベリアンさんほど美味しくは淹れられませんが、モーニングティーをどうぞ」
『いただきます』
紅茶のあたたかさが身体に染み渡る。
なんだかリラックスして眠ってしまいそうだ。
『美味しいです、ナックさん』
「ありがとうございます、主様」
『ナックさんもよろしければ一緒にティータイムはいかがですか?』
私の隣の空いているところを示しながら誘えば、ナックさんは慌てて顔の前で両手を振りながら首も勢い良く横に振った。
「とんでもございません! 主様とご一緒の席に着くなど執事としてありえませんっ!」
『そ、そうでしたか……。ごめんなさい、主従として適した行動がなにか分からなくて……』
「突然大声を出してしまい、私のほうこそ申し訳ございません。主様のお気持ちは嬉しいですが⸺」
『執事としてはありえない、ですよね? もしも、これからおかしい行動をしてしまったら教えてくださいね。誰かの主になるなんて初めてのことですので……』
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悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます!のんびり更新ですがよろしくお願いします…! (5月3日 22時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠莉 | 作成日時:2024年3月14日 22時