□(23) ページ23
『そんな……フルーレさんが謝られることではないですよ』
他の執事さんに伝えた時間よりもかなり早い時間に目覚め、うろついていた私がどちらかというと悪いような気がする。
いつ来るか分からなかった主の準備をしていなくても、責めるつもりなんてない。
「そう言っていただき、ありがとうございます、主様。ご準備しますので、俺の部屋……には行けませんので、主様のお部屋でお待ちいただけますか」
『分かりました。ですが、もしかしてフルーレさんのお部屋に服を置いているのでしたら、フルーレさんのお部屋に行ったほうがよろしいのではないですか？』
私の手を引いて調理室から出ようとしていたフルーレさんの足が固まった。
気のせいか、他の執事たちの動きも止まり、部屋の温度も下がった。
震えた声で答えるフルーレさんの様子に、私は間違った発言をしてしまったのだと気がつく。
「…………あ、あの……主様。お、俺の部屋は……ちょっと、いえ、かなり……片付いていませんし、主様をお通しできるような状態では……ありませんので……」
フルーレさんに取られていた手を、今度はナックさんに取られた。
私の手がナックさんに移って、フルーレさんはどこか安心したようにホッと息をついていた。
ナックさんはこれまた美しく、完璧な笑みで私に微笑みかける。
「僭越ながら主様。先ほど注意してほしい……とお伝えした執事の話を覚えていらっしゃいますか？」
『え、えぇ……。フルーレさんのお部屋に行かないほうが良い理由も理解しました。大人しく自室でお待ちしていますね』
「はい、私がご案内いたします。主様」
ナックさんの言葉に、フルーレさんの同室の執事にラトさんという方がいることを察する。
いつか顔を合わせる機会があったとしても、それは早朝にわざわざお部屋にお邪魔して挨拶する必要はない。
それはラトさんでなくとも、他の執事でも同じことが言えるだろう。
調理室に集まった今が例外なだけである。
ナックさんに手を引かれながら調理室を出る前に、私は振り返って皆さんに声をかけた。
『すみません、皆さん。また後ほど、改めてごあいさつさせてください。ロノさんも朝ごはんの準備の邪魔をしてしまい、すみません……。ロノさんの作るごはん、楽しみにしていますね』
「主様じゃなくムーが迷惑をかけたんですよ。気にしないで楽しみに待っていてください、主様！ 出来上がりましたらお呼びしますね！」
そうロノさんはにこやかに笑い、私を見送った。
ひらひらと皆さんに小さく手を振ると、ロノさんとムーちゃんだけが振り返し、他の三人は軽く腰を折る。
それがなんだか寂しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます！のんびり更新ですがよろしくお願いします…！ (5月3日 22時) (
レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悠莉 | 作成日時：2024年3月14日 22時
