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『黒猫ちゃんはきちんと謝れて良い子ですね』
黒猫ちゃんを抱き上げて顎の下を撫でると、ゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らす。
本当に、しゃべらなければ普通の猫と変わらない。
そんな黒猫ちゃんを初めて見た二人は開いた口が塞がらないようだ。
「猫が、しゃべっていますね……」
「……こいつはなんなんだ、ロノ」
「あぁ、こいつは昨日⸺」
ロノさんが二人に説明しようと口を開いたそのとき、また新たな執事がやってきた。
「ロノっ! 朝からうるさいよ!」
「叫び声が聞こえたけれど、どうしたの、ロノ?」
小柄な方と背の高いスラッとした方。
ペコリと頭を下げてみれば、二人は目を丸くする。
「えっ!? も、もしかして、主様……?!」
「朝から騒いでしまい、申し訳ございません! ロノ、主様に謝った!?」
「なんでオレが!?」
「朝から叫ぶからでしょ!」
『私は気にしていないので大丈夫ですよ。えぇと……』
小柄な方のほうを向いたけれど、まだ名乗られていないからなんて呼びかければ良いか分からない。
彼らは慌てた様子で腰を折った。
「すみません、主様! ご挨拶が遅くなり、申し訳ございません。俺は衣装係のフルーレと申します」
「俺は執事のフェネスと申します。よろしくお願いします」
『こちらこそよろしくお願いいたします。私は皆さんの主となりますAと申します。こちらは私の執事となった、先ほど勝手にササミを食べてしまい、ロノさんに怒られてしまったしゃべる猫の⸺』
『黒猫ちゃん』と呼んでいたけれど、ずっとそう呼んでいるのもどこか味気ない。
『そういえば黒猫ちゃんにはお名前ってありますか……?』
「すみません、主様。僕、名前があったかどうかも覚えていなくて……」
寂しそうに言う黒猫ちゃんに、それ以上は何も聞けない。
『それではお名前を考えたほうが良いですかね?』
「いや、おまえ、ムーって言うんじゃねぇの? おまえの首輪に“MUU”って書いてあったぞ?」
「へぇ〜! 僕はムーって言うんですね!」
『ロノさん、さすがです……!』
「へへっ、ありがとうございます、主様!」
『たしかにずっと赤い首輪をしていましたものね……。ムーちゃんは誰かに飼われていたのでしょうか?』
「それも覚えてなくて……」
『そうですよね……。ですが、ムーちゃんと呼ばれるのが嫌でなければ、これからはムーちゃんと呼びますね』
盛り上がる私たちニ人プラス一匹を、横から頭を抱えたハウレスさんが止めた。
「……主様、少々お待ちください。我々は猫がしゃべることも、その猫が執事となることにも頭が追いついておりません」
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悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます!のんびり更新ですがよろしくお願いします…! (5月3日 22時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠莉 | 作成日時:2024年3月14日 22時