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暗くてよく見えないけれど、音が聞こえてきた方向から察するに、先ほどまで天使がいた所に何かが落ちてきたようだ。
屋敷から誰かが物を落としたのかもしれないと一瞬だけ考えたけれど、近くに窓はない。
まさか、空から降ってきたのでしょうか？
「主様はここで待っていてください。オレが様子を見てきます」
『私も一緒に行きます』
「いえいえ、天使の罠かもしれませんし、主様を危険に晒せませんよ」
『……分かりました』
そう言って落下物に近づいていくロノさんの背中をその場から見守る。
ゴソゴソと何かを調べているみたいだと思っていると、ロノさんが突然飛び上がった。
「うわっ！ なんだこの黒い毛玉！？」
『ロノさん！？ 大丈夫ですか？！』
「だ、大丈夫です、主様！ なんか黒い豚が木箱に入っていたんすよ！」
慌ててロノさんに駆け寄り、背後から覗くと、暗闇に光る赤い瞳。
この目を私は知っている。
ついさっき、この世界に来る前に会話をした黒猫と同じだ。
『……黒い豚ではなく、黒い猫ではないですか？』
「こんな鼻が潰れた猫、見たことないですよ。きっと黒豚です」
『そうですか。うーん……暗闇の中なので、実はよく見えてないんですよね』
「あぁ、気がつかずすみません。この黒豚を連れて部屋に戻りましょう」
ロノさんは片手で黒猫を抱え、もう片手を私に差し出す。
その手を取り、部屋に戻ろうとすると、黒猫が叫んだ。
「さ、さっきから失礼ですね！ 僕は豚じゃありません！ 猫ですよ！」
「猫！？ なんでこいつしゃべってんだ！？」
「えーっと……、たしかに猫が話すのは変ですよね……」
「いや、自分で言うなよ！」
『こちらの世界でも猫ちゃんが話すのは普通ではないんですね』
叫んだ黒猫の声は、聞き覚えのない元気な明るい声。
私をこの世界につれてきた黒猫かと思ったけれど、違う猫だったかもしれない。
そうなれば、人間の言葉を話す黒猫が少なくとも二匹はいることになる。
『こんな暗いところで話していても、らちが明きませんし、戻りましょう、ロノさん』
「そうですね、主様。お足元にお気をつけください」
『ありがとうござい⸺』
急に足に力が入らなくなり、まぶたも重くなる。
ロノさんに心配をかけるだろうから倒れたくないのに、力が出ない。
あぁ、理解が追いつかない出来事ばかりで、身体がストレスに耐えられなかったのかもしれない。
「主様！？ 大丈夫ですか！ 主様！！！」
私の想像どおりに心配そうな悲鳴をあげたロノさんに身を任せ、私は意識を失った。
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悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます！のんびり更新ですがよろしくお願いします…！ (5月3日 22時) (
レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悠莉 | 作成日時：2024年3月14日 22時
