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キーンと、なにか金属が落ちた音がする。
黒猫が私のほうを振り返り、赤い瞳でジッと見つめてきた。
『猫ちゃん、なにか落としましたよ？』
黒猫が“なにか”をくわえて、私の足元にやってくる。
ポトリと私の足元に落とされた“なにか”は、またキーンと音を響かせた。
『ずいぶんと器用な猫ちゃんですね……』
「にゃーお」
手にとって見ると、それは金色に鈍く光る指輪だった。
ぼんやりと指輪を眺めていると、黒猫はすりすりと私の足にまとわりつく。
なんとなく、なにかに導かれたかのように左手の中指に指輪をはめてみると、突然、ふわりと意識が遠のいた。
薄れゆく意識の中で、かすかに猫が切なげに鳴く声が聞こえてきた。
***
目が覚めると、そこは真っ暗な暗闇の世界だった。
『誰か、いませんか……？』
震える私の声に、答えるものは誰もいない。
……かと思われたのに、「にゃおーん」と猫の声が耳に届いた。
きっと、さっきの妙に器用だった黒猫の声だ。猫違いかもしれないけれど。
どこにいるのだろうとキョロキョロと辺りを見渡すと、ぼんやりと暗闇の中で赤い瞳が光り、私はそちらへゆっくりと歩みだす。
このよく分からない状況で、頼りにしているのが猫ちゃんだけというのも我ながら情けない。
ふと、不安が口からこぼれ落ちる。
『これは夢、ですかね……？』
すると、暗闇の中で、落ち着いた、大人びた女性の声が響き渡った。
「⸺いいえ、夢じゃないわ」
『ね、猫ちゃんが、喋っています！？ やっぱり、夢……？』
思わず後ずさり、頬をつねってみたけれど、痛い。
これは、本当に夢ではないのかもしれませんが……。
理解が追いつかなくて足が止まった私に向かって、黒猫が歩きながら話し続けてきた。
「いいえ、夢じゃないの。突然で申し訳ないけれど、私ね、あなたに彼らを救ってほしいの」
『待って、ください……。彼らって……？ それに、私が誰かを救うだなんて……そんな大それたこと、できません……』
「あなたにしかお願いできないことなの」
そうして、黒猫いわく。
人はみんな心に闇を抱えて、鈍感になりながら生きていること。
気がつけば時間が流れ、少しの後悔を抱えて死んでいってしまうこと。
このままでは私も、“彼ら”も⸺
そうなって欲しくなくて、猫ちゃんは私にお願いをしているということ。
黒猫の説明を聞いても、なぜ私なのか、受け入れたくなくてゆるゆると首を横に振る私に、無情にも黒猫は別れを告げた。
「さぁ、目を開けて。彼らがあなたを待っているわ。また会いましょう」
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悠莉(プロフ) - 雪女さん» 雪女さん、コメントありがとうございます！のんびり更新ですがよろしくお願いします…！ (5月3日 22時) (
レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます🙂 (5月3日 9時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悠莉 | 作成日時：2024年3月14日 22時
