▽ ページ16
────斯くして、 話は冒頭に戻る。
｢そっか｣
頭が、理性がどんどん蝕まれていく。
底なし沼に踏み入れたような感覚を抱えながら、表情を窺う。
いつもの通り、穏やかな表情だ。
｢いつでもいいよ｣
それを合図に犬歯を指に力を込める。
人間にしてはあまりに鋭利なそれは、ゆっくりと、いとも簡単に皮膚を突き破った。
｢……！？｣
瞬間。頭を殴られたような衝撃が走る。
口に入れた瞬間からもう一口を求めてしまう中毒性に、確信した。
今までの血液とは、何もかもが違う。
(なに、これ。)
あたまが、くらくらする。
あえて例えるなら蜂蜜をじっくり煮込んだみたいな甘さで、
まるで、僕に飲ませるためにある、みたいな、
…あぁ、だめだ。全然頭が回ってくれない。
｢……ね、俺、おいしいでしょ？｣
掠れた声が鼓膜を揺らす。
思わず身体が跳ねる。
冷や汗でじっとりとした背中に肌着が吸いついて、気持ち悪い。
でも、それ以上に目の前の男の思考が分からなくて、恐ろしい。
そんな僕を見て、福良はふわりと笑うだけ。
血と涎で濡れたそれをもう一度唇に押しつけられた。
｢……っ、｣
(もし、もう一度あれを口にしてしまったら。)
｢えぇ……遠慮しなくていいのに。｣
反射的に顔を逸らすと、少し残念そうな顔をして、それからゆっくりと微笑んだ。
｢…知ってる？非たんぱく質の野菜は血液をさらさらにしてくれるんだってね｣
｢……は？｣
｢あ、確かにんじんと、ほうれん草と……あとはトマトもだったかな？｣
穏やかな表情で口を開いたかと思うと唐突に披露された雑学に顔をしかめる。
…いや、どう考えても今はそういう空気じゃないだろ。
｢…えへ、結構頑張ったでしょ？｣
子どもみたいなセリフを吐く福良。
なのに、有無を言わせない雰囲気がどうもアンバランスで。
大きな氷を丸呑みにしたように、身体の中がゆっくりと冷えていくのを感じた。
｢────ねぇ、もし俺が河村が吸血鬼だってこと知ってたって言ったらどうする？｣
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あ - 一気読みさせて頂きました！貴方様のizkoとymkoが大好きです！特にkoちゃんがテレパシーを使えるようになってしまう話や、王様ゲームの話がものすごい刺さって、何度も読み返させていただきました！それ以外のお話も大変好みで、キュンキュンさせていただきました！ (2023年1月26日 0時) (
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作者名：みたらし | 作成日時：2022年7月8日 0時
