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｢はい。｣
福良が両手を広げる。
なんだそのポーズ、すしざ＊まいか？
くだらないボケにも｢ちがうよぉ｣と返す柔らかい笑みに、少しずつ心が浮上していく。
なんで、こいつの隣はこんなにも息がしやすいんだろう。
｢えっと、疲れてるみたいだったから、充電…的な？｣
｢…恥ずかしいやつ｣
言葉とは裏腹に、そっと近付いて背中に手を回す。
憎まれ口しか叩けない僕を、こいつはもう全部わかってると言わんばかりに優しい目で見てくるから、こいつの前では、自分が普段纏う、どんな定義付けだって脱ぎ捨てて、ただの、どうしようもない人間になれる。
｢……ちょっと、こんなに素直なの珍しくない？｣
｢…僕のことなんだと思ってんだよ｣
｢そういうところも好きだな、って思ってるけど｣
…あぁ、こんな。
なんでもない一言で、こんなにも心臓が鳴りやがる。
僕もずいぶんしょうもない人間になってしまったようだ。思わず笑いがこぼれてしまう。
｢…っていうか、自分で言って照れるのやめてくれる？｣
｢えぇ…河村だって照れてるくせに｣
｢……ねぇ、今ここでキスしたいって言ったらどうする？｣
｢え、ほんと？｣
｢うそだけど｣
｢えぇ、なんだぁ〜…｣
でも、お前とならそんな日常も悪くない。
お前と一緒にいるときの自分のことも、僕は案外愛してしまっているのだ。
ふと顔を上げると、けらけら笑う福良の顔が完全に緩んでいるから、ついいたずら心が沸き起こる。
後頭部を引き寄せると、簡単に顔が近づいて、異変に気付いた福良が目を見開く。
｢……………っ、！｣
福良が言葉を発する前に、僕の指の震えがばれてしまう前に、映画のワンシーンのような滑らかさで唇を奪った。
｢ごちそうさま、でいいのかな？｣
｢……ほんっと、いい性格してるよね｣
不意をつかれて、クイズでもないのに悔しそうな顔をする姿に優越感を感じる。僕としてはいつかの借りを返すことが出来たから満足だ。
｢あのさ、俺もしていい…？｣
｢……そのくらい、察してみなよ｣
少し突き放した言い方になってしまっただろうか、と思ったが、当の本人はえへへ、なんてわざとらしく笑って｢ありがとう｣って…分かりやすいんだよな、本当。
こんな風に、何でもないことで一喜一憂して、ありきたりな幸せを噛み締める度に、
(あぁ、人間でよかった。)
なんて、当然ながら思ってしまうのだ。
『インカーネーション』
【意味】
神が人間の形をとること。受肉化。
作者より（今後の更新について）→←恋とインカーネーション（fkmr）
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あ - 一気読みさせて頂きました！貴方様のizkoとymkoが大好きです！特にkoちゃんがテレパシーを使えるようになってしまう話や、王様ゲームの話がものすごい刺さって、何度も読み返させていただきました！それ以外のお話も大変好みで、キュンキュンさせていただきました！ (2023年1月26日 0時) (
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作者名：みたらし | 作成日時：2022年7月8日 0時
