おそ松×バンドマン ページ1
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「…また渡せなかった」
人気バンドのボーカル、おそ松さんに恋をして、やがて一年近く。
友達からは「バンドマンに恋すると大変だから止めときな」と言われたけれど、それでもこうしてライブに足を運んでは彼の歌声とあの笑顔を欲しがってしまう。
一言でいいから、「応援してます」ぐらい言いたい。
そう思って手作りの差し入れを渡そうと試みるけど、熱心なファンの押し合いに負けて渡せずじまいの連続。
「会いたいな…」
渡せないと努力した甲斐がない。
ライブ後の誰もいない階段で一人うつむけば、小さな雫がポタリとクッキーの包みを濡らした。
「あっれ、どうしたのこんなところで」
「お、そ松さん…!?」
階段に響いた声に顔をあげれば、パーカーを着たおそ松さんがいた。
「なーんで可愛い子ちゃんがこんな所で泣いてんのかな?」
おそ松さんは私の顔を覗き込むと、パーカーの裾で涙を拭いてくれた。
かすかに香る煙草と男の人の匂いに、本人なんだと改めて気づかされ胸の鼓動が速くなる。
「あの…」
「ん?」
「ずっと、応援してて…っ、その……好きなんです…!」
一言だけのつもりが、気づけば気持ちが滑り出していて、かぁっと身体中が熱くなる。
「…ファンとして?」
「……本気で好きなんです…」
彼の歌声が好き。笑顔が好き。ファンに優しい所が好き。
だけど、それ以上に彼の事を知りたいと思うこの気持ちは中途半端なものじゃない。
おそ松さんは驚いたように口を手で抑えると、「まじ…」と呟いた。
「俺さ、ライブで歌うとき必ず見てる方向があって」
「…君を、いつも探してんの」
「…え?」
「……俺も、好き」
そう言ってふわりと抱き締められた。
「一年前ぐらい、会場ですっげぇ可愛い子と目が合って。俺ライブの度にずっと目で追いかけてさ……それが、君」
突然すぎる展開に、ドキドキが止まらない。
「いつも、出待ちで後ろの方に居るよね?」
「気づいて…!?」
「好きな子はどこにいても分かんの」
例え大勢の客の中でも、と笑う彼に胸がぎゅっと締め付けられる。
「たまたま忘れ物取りに来たら好きな子がいて、それだけでも嬉しいのに両想いとか…」
「…俺今すっげぇ幸せ」
にこりと笑う彼はそっと私の頬に手を添える。
「君の名前、なんてゆーの?」
「…A」
「かわいい名前」
「…A、俺の彼女になってくれる?」
「……はい」
神様。努力の甲斐がありました。
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rabi - 普段の生活にお差し支えないようできれば…お気持ち私、すごく分かります〜〜!大変お手数ではありますが掲載時の体裁につきまして、又私のお題箱にご連絡頂けますと幸いです。 素敵な作品を描かせて頂ける事、本当に幸せ思います。ありがとうございます! (2017年11月30日 21時) (レス) id: b77ea76641 (このIDを非表示/違反報告)
rabi - 原作を頂きましたMさんのお名前と、原作を漫画にさせて頂いた旨だけを文字で掲載する、もしくはサイトURLも掲載許可頂けるのであればそちらも載せさせて頂ければと存じます。 (2017年11月30日 21時) (レス) id: b77ea76641 (このIDを非表示/違反報告)
rabi - また、改めて頂きましたメッセージ、とてもとても光栄で…是非ワンシーンを描かせて頂けましたら光栄です! お伺いしたかった件なのですが、ツイッターにあげる際にMさんの原作をどのようにお伝えしようかという点です。 (2017年11月30日 21時) (レス) id: b77ea76641 (このIDを非表示/違反報告)
rabi - Mさん、ご返信ありがとうございました!私こそ感想欄をお借りしてしまって申し訳ありません。 Mさんの作品、拝読させて頂きました。おそ松海の家がすごく好きです!スパダリ兄さん…!長兄おばけ屋敷も大好きです。 (2017年11月30日 21時) (レス) id: b77ea76641 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - 続き書いてほしいです! (2017年11月8日 22時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2016年10月31日 5時