Serendipity【TH】

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「お〜A〜！鳴らしたら出ないから電話しちゃったよ〜」





家へ帰ると、家の前には事務所の先輩・スンギオッパが立っていた。
スンギオッパは私の尊敬する先輩。
入所したばかりの頃、トイレの場所が分からず迷っていると、案内してくれた。
それから何かと気にかけてくれて、忙しいのに、ご飯や買い物に連れて行ってくれて、妹の様に良くしてくれる。
仕舞いには敬語じゃなくていいなんて本当にどこまでも優しい先輩。

元々歌手だから歌も上手だけど、演技も上手で、何より優しくて誠実、謙虚な性格で、すごく人気がある。





『オッパ〜、先に言ってくれたら家にいたのに〜』


SN「ごめんごめん、たまたま近くに寄ったから」


『どうぞっ』






リビングのソファを促し、コーヒーの準備をする。






SN「新曲の方はどう？」


『う〜ん、あまり浮かんでなくて...』


SN「だからか。最近スタジオで会わないと思って」


『それで、来てくれたの？』


SN「そうだよ、芸能界嫌になったかと思って(笑)」






スンギオッパの、口角が上がった大きめな口に、えくぼ、綺麗な歯並び。
さすが、笑顔が美しい好感度俳優1位に選ばれるだけある。

そんなことないよ、と言えば、なら良かった！と目も細くなる。






SN「A、良かったら、初めて配信した歌を録り直したら？」


『え？』


SN「新曲が浮かばないなら、セルフカバーもいいんじゃないか？音源化してないなら、尚更。Aの始まりの歌なんだから。」






妙に、胸にストンと落ちた。
きっとそこまで影響してるとは思ってもいないであろうニコニコしたスンギオッパ。






SN「俺あの歌好きだから、今のAから聞いてみたいよ」





出来たコーヒーを飲み始める。
今のスンギオッパは誰よりもかっこいい。






『ありがとう、スンギオッパ』


SN「出来たら聞かせてな！」


『もちろん！』






しばらくの間、私は久しぶりのスンギオッパとの他愛ない話を楽しんでいた。




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