自覚済みの好きすぎる。【東リべ】【松野千冬】

話題の三ツ谷くん ページ11

Aさんside


場地くんが居ないなと思っていたけれど、手芸部の友達と話していたらしい


それこそ三ツ谷くんだ



手芸部の中に入ると、3人の男の子と1人の女の子がいた

もれなく美男美女で入るのを躊躇うくらい。



「あ、千冬！…と、誰？」


小柄な男の子が千冬くんを見て嬉しそうに笑ったかと思うと、隣にいる私を見て声のトーンを落とした。

幼めの顔からは想像しがたい、威圧感のある姿


千冬くんが私の前に立つ


「白高のAさんっス」


私は紹介にあずかり、ペコッと頭を下げた


すると、紫がかった銀色の短髪をした男の子が近づいてきた
その後に続き、1人の女の子も



「三ツ谷隆。話はいろいろと聞いてる。よろしくな」

「ウチ、エマ。よろしくね！」



三ツ谷…さん

…あのワンピースの作者さん

ちょっと着崩した制服はなんだかお洒落。優しげな目元。
耳のピアスがとても似合っている、どこか兄貴感漂う人だった


一方、エマという女の子はとっても可愛い

類を見ない可愛さに思わず口を開ける。さりげなく握られた手が汗ばんだ



「…ってことで、これ。マイキーに渡してみ」


三ツ谷くんがこそっと私に袋を渡し、小声で耳打ちする


「あっ、マイキーっていうのは『誰？』って聞いてきたやつね」


エマちゃんが説明してくれたが、展開が掴めない

ただ、渡された袋の底はじんわりと温かかい



ちらりと小柄な男の子を見ると、千冬くんたちと話していた


「へー…場地たちの知り合いなんだ」


パチッと目が合う

ちょっとだけ怖かったけれど、今だと思って話しかける


私は渡された袋をマイキーくんという子に差し出す


「あの、これ、どうぞっ！」



マイキーくんが袋を見たその途端、声を上げた



「あっ、たいやき!!くれんのか!?…お前、良い奴だな」


「…！」



さっきまで怪訝そうに私を見つめてたその目は、きらきらと輝いていた

袋の中身はたいやきだったらしい
反応からして大好物なんだろう



三ツ谷くんを振り返る



「よかったな」



三ツ谷くんはふっ、と大人っぽい笑みを私に向ける

うわぁ、と感激した


私がマイキーくんに気に入ってもらえるように、という粋な計らいなんだろう


この人、作品だけじゃなくて心まで素敵すぎる

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